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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十四話 羽衣草を持っていくよ
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白銀の世界へ

「……幼い頃に、グラソン地方の洞窟でその花を見たことがあるからだ」


 皆の視線が、一斉に柊平へと集まる。


「柊平さん、その場所、今でも覚えている?」

「……あの辺りは洞窟が多いので、詳しい場所までは覚えていません。ですが、大体の場所はわかります。……そこまでご案内することも可能です」

「了解。では、今回の任務には私と理玖、柊平さんの三人で向かいます。他の皆には屋敷待機を命じます。蒼一朗さんと心くん、もどかしいと思うけれど我慢してね」

「場所がわかるなら、地図があれば行けるだろ……!」

「僕も、やっぱり行きたい……」


 蒼一朗と心は、やはり諦めきれない様子である。

 そんな二人に、透花が優しく諭す。


「大和くんと美海ちゃん、時々目を覚ましているんだよ。その時にお兄ちゃんがいなかったら心配すると思う。だから、二人の傍にいてくれないかな」

「それに、地図を頼りに行くのは無理だよ」


 援護射撃とばかりに、湊人も口を開いた。


「グラソン地方は、雪深いせいで正確な地図が作られていない場所も多いからね」


 これを言われてしまっては、二人は引き下がるしかない。


「……わかった。すげー不服だけど、ここで待つわ」

「……絶対に、お花を持って帰ってきてね」

「任せて。待機班のリーダーは湊人くんにお願いするね。何かあったら、すぐに連絡して」

「了解。どこまで電波が届くかわからないけど、できるだけ遠隔サポートさせてもらうよ」

「よろしくお願いします。理玖、薬について引き継ぎとかしなくて平気?」

「……君に頼もうと思う」

「ぼ、僕ですか……?」


 理玖が指名したのは晴久である。


「……僕の薬を一番見慣れてるのが君だからね」

「わかりました……! 僕でお役に立てるなら……!」

「……じゃあ、症状別に飲ませる薬を渡すから部屋まで来てくれないか」

「はい……!」


 薬の受け渡しをするために、理玖と晴久は部屋を出て行く。


「……俺は、大和の様子見てくるわ」

「美海、大丈夫かな……」


 二人の様子を見るために、蒼一朗と心はそれぞれの自室に向かった。


「何か有用なデータがないかもう一度調べ直してみるよ」


 情報収集に集中するために、湊人も部屋に戻ってしまう。

 残されたのは、透花と柊平、虹太、颯の四人である。


「柊平さんがグラソン地方に詳しくて助かったよ」

「……いえ、詳しいというほどでもありません。幼い頃に数回行ったことがあるだけです」

「旅行ですか!? スキーとかスノボとか、楽しそうっすよね!」

「え~、そう? 俺は寒いのは嫌いだなぁ。暑いのも苦手だけど!」

「……親戚の家があるんだ。久保寺家は元々、グラソン地方の出身だからな」

「そうなんだ。それにしても、よく子どもの頃に見た花について覚えていたね」

「よっぽど楽しかったんじゃないすか!?」

「確かに~。楽しかったことって自然と覚えてるもんだもんね♪」

「……いや、逆だ」」

「「「え?」」」

「………………………………。どこを見渡しても銀世界なので、生まれて初めて迷子になりました……。寒さを凌ぐために入った洞窟で、偶然その花を発見して……」

「……人間、辛い思い出の方が記憶に残りやすいっていうもんね」

「でも、思い出があるだけいいっすよ! 俺なんてなーんにもないんすもん!」

「というか、柊平さんにもそんな時代があったんだね~! かわいーじゃん☆」

「……見たこともないような美しい花だったので覚えていました。まさか、このような形で役に立つことになるとは……。人生、何が起こるかわからないものです」

「本当だね。よし、おしゃべりはこのくらいにして、私たちも準備をしようか」

「……かしこまりました」

「透花さん、柊平さん、気を付けて行ってきてくださいっす!」

「ほんとだよ~。特にりっくんなんて弱そうだから、ちゃんと守ってあげてね♪」

「大丈夫だよ。誰も怪我せずに帰ってくるつもりだから、屋敷のことはよろしくね」

「うっす! 頑張ります!」

「りょーかい☆ 俺にまっかせといて~!」


 こうして透花、柊平、理玖の三人は、極寒の地グラソンへと赴くことになった。

 白銀の世界で、一体何が待ち受けているのだろうか――――――――――。

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