感染ルート、判明
部屋に戻った理玖は、マスクの分析を行っていた。
(やっぱり……。このマスクが感染源で、間違いない)
すると理玖の読み通り、プワゾモルティージュの成分が検出されたのだ。
(……なんらかの方法で、プワゾモルティージュを時限式の毒草へと変える。それをマスクに塗り込み、必ず吸い込むように仕向けたんだ……。帰ってきた彼らは、マスクなんてつけてなかった。十中八九、植物園で回収されたんだろう。燃やしてしまえば、なんの証拠も残らない。でも、こんなことができるのなんて……)
そこまで考えた理玖は、首を小さく横に振る。
(……いや、今はこんなことを考えてる場合じゃない。とにかく、彼女に伝えよう)
理玖は、部屋を出ると階段を下りる。
すると、玄関で透花と出くわした。
一太を見送ったところのようだ。
「……彼、帰ったの」
「うん。ちょうど今帰られたところだよ。マスクはくれるって」
「……そう。あの、話があるんだけど」
理玖は、自分の分析結果、そして考察を透花に話す。
透花はそれを、静かに聞いていた。
「……というわけで、他人から貰った物を容易に身に付けないように通達してほしい。方法はわかったけど、目的まではわからない。……もしかしたらまだ、続くかもしれないから」
「わかった。すぐに軍本部に連絡しておくね。二つの薬草を取りに行くことについてはみんなが帰ってきてから話し合いたいんだけど、それでも大丈夫かな?」
「……ああ。この毒に即死性はない。……だけど、あまり長引かせたくはないな」
「みんなにも、それぞれ仕事や学校が終わったらすぐ帰宅するように連絡しておくよ」
理玖のおかげで、症状を引き起こす原因や感染のルートなどは判明した。
あとは、解毒のために必要な二つの植物を手に入れるだけである。
……だがそれも、簡単な道のりではない。
一筋縄ではいかない旅路に、一色隊は繰り出そうとしていた――――――――――。