幻の花、オーランピドール
(プワゾモルティージュを解毒するために必要なのは、オーランピドールとデザントクスィカフィーヌ……。これは、大変だな……)
サンドイッチを食べ終えた理玖は、様々な文献を読み漁っていた。
そして漸く、解毒に必要な植物が判明したのだ。
だがこの二つの植物は稀少なもので、理玖でも持ち合わせていなかった。
(デザントクスィカフィーヌはまだいい……。扱ったこともあるし、生えている場所も知ってる……。だけど、オーランピドールは……)
デザントクスィカフィーヌは、理玖の出身であるエルブ地方で採れるものだ。
彼が家族と住んでいた家の周りにも生えていた。
だが王都では栽培されていないため、エルブ地方まで行かなければならない。
それよりも厄介なのは、オーランピドールという花だ。
グラソンという寒い地方のどこかに生息しているらしい。
だがあまりにも人目に触れることがないため、幻の花と呼ばれている。
そして、扱いが難しい花でもあった。
(この二つを採集しに行くとしても、僕一人じゃ無理だ……。彼女の帰りを待つか……)
理玖が言う彼女とは、透花のことである。
透花は、朝から王宮に呼ばれ屋敷を空けていた。
(食器、台所に置きにいかないと……)
先程晴久と交わした約束を破るわけにはいかない。
理玖は食器を持って部屋を出ると、階段を下りた。
キッチンに着くと、自分でそれを洗い乾燥機にかける。
そして、自室に戻ろうとしたところで玄関の扉が開く音が聞こえた。
透花が帰ってきたと思った理玖は、玄関に向かう。
「ただいま」
「お邪魔します!」
そこには確かに透花がいたが、一人ではない。
彼女の隣には、先日理玖のことを女性と間違えた男が立っていた――――――――――。