広がる脅威
翌朝になっても、大和と美海の熱は下がらなかった。
透花は学校へ、二人の欠席を連絡するために電話をかける。
すると昨日遠足に行った全児童、そして教師も体調を崩していることが判明したのだ。
心配する心をなんとか学校に送り出した理玖は、原因を考え始める。
(……僕の薬が効かないなんて、よっぽどのことだ。二人だけじゃなくて他の子どもたちも感染しているとなると、十中八九昨日の遠足のせいだろう。早く原因を突き止めないと、これ以上の被害の拡大にも繋がるか……)
理玖はマスクと手袋をすると、大和の部屋に入っていく。
何が原因で理玖にも感染するか、わからないからだ。
大和が寝ているのを確認してから、血液と唾液を拝借した。
美海の部屋でも同じことを行い、自室へと戻った。
(……そうだ。一応、彼には連絡しておくか)
理玖は、徐に電話を手にするとどこかと連絡をとり始めた。
『はい! 佐々木だべ!』
「……僕だけど」
電話相手は、どうやら大吾のようだ。
『先生! どうしたべ? もしかしてもう、出勤の時間だったか!? おら、遅刻か!?』
「……違うよ。今日は、来なくてもいい」
『えっ!? なんでだ!? ま、まさかクビじゃ……!?』
「……屋敷で、あんまりよくない病気が流行ってる。君は丈夫そうだけど、君を介して奥さんにうつったら大変だろう。だから、今日は休みでいい」
『焦ったべー! わかった! それにしても春原先生はやっぱりやさし……』
「……じゃあ、僕は忙しいから」
大吾の話を最後まで聞かず、理玖は電話を切ってしまった。
そして、先程採取してきた血液、唾液と向かい合う。
(これを調べて、何かわかればいいんだけど……)
こうして理玖は、病気の原因を究明すべく分析を始めたのだった――――――――――。