相反する同齢コンビ
「おい! 大和はどうなんだ!? 風邪か!?」
「美海は……? 大丈夫かな……」
「……これから話すから、とりあえず座って」
リビングに着くと、早速蒼一朗と心に問い詰められた。
そんな二人を制すると、理玖はソファに座る。
「……今は、熱冷ましの薬を飲んで眠ってるよ。これで朝までに熱が下がればいいけど、下がらなかった場合、厄介なことになるかもしれない」
「どういうことだ……!?」
「風邪じゃ、ないの……?」
「……正直、僕にもよくわからない」
理玖は、自分が感じた違和感について話し始めた。
ほぼ同時に発症し、意識を失ったという点がどうしても気になるのだ。
「……とりあえず、明日の朝までは様子見だよ。君たちにもうつるといけないから、今日は別の部屋で寝て欲しい。診療所のベッドを使ってもらっても構わない」
いつもは、蒼一朗は大和と、心は美海と同じ部屋で寝ているのだ。
だが今のこの状態では、同じ部屋で寝ることは避けた方がいいだろう。
「……俺は、このソファでいい。診療所だと、すぐに大和のところに行けねーし」
「僕も……」
「蒼一朗さんはともかく、心くんはちゃんとベッドで寝た方がいいよ。明日も学校だよね」
「でも……」
「じゃあ心、俺の部屋に来いよ!」
淀んだ空気を払うかのように明るく言ったのは、颯だ。
彼の部屋は、心の部屋の隣に位置していた。
「俺の部屋なら、すぐに美海ちゃんのところに行けるぜ! 布団持ってこいよ!」
「……ん、わかった。ありがとう……」
「困った時はお互い様ってやつだ! 蒼一朗さんも柊平さんの部屋で寝たらどうっすか?」
蒼一朗の部屋は、柊平の部屋の隣だ。
颯は善意からこの言葉を発したのだが、二人は神妙な面持ちである。
「……いや、俺はソファでいいわ」
「……ああ、私からもそれで頼む」
お互いに認め合っているものの、同じ部屋で一晩を過ごせるほど仲良くはない。
この二人、未だに微妙な距離感なのだ。
それに柊平は、自分のテリトリーに他人を入れたくないというのもある。
「……とにかく、話は明日の朝だ」
「わかった。理玖、ありがとう。みんな、これ以上病人が増えないためにも、今日は早めに寝るように。特に湊人くん、よろしくね」
「……はいはい」
夜更かしの癖がある湊人に、透花が柔らかく釘を刺す。
これで解散となり、皆は各自の部屋に戻っていく。
この日の一色邸は、いつもよりも早く消灯時間が訪れたのだった――――――――――。