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嵐の前の
「ただいまー!!」
「………………………………!!」
「二人とも、お帰りなさい。遠足は楽しかったですか?」
「うん! とっても楽しかった! たくさんお花を見たよ! ねっ、やまとくん!」
「………………………………♪」
大和は、『どうぶつもかわいかった!』と書いたノートを晴久に見せる。
この日、大和と美海の二人は遠足で動植物園に行っていた。
よっぽど楽しかったようで、満足そうな表情で帰宅したのである。
「よかったですね。ではまずは、手洗いうがいをしましょうか。病気は怖いですからね」
「はーい! やまとくん、いこっ!」
「………………………………!」
帰宅してすぐに手洗いうがいをすることは、二人の習慣になっていた。
そのおかげか、この屋敷に住み始めてからは風邪などをひいたことがない。
二人は、いつも通りに手洗いうがいを済ませてから部屋へと戻っていく。
……この時は、まだ誰も気付いていなかった。
見えざる敵が、二人に迫っていることに――――――――――。