人類みーんな友達さ!
「美海ちゃん、やっぱり子ども用のギター買おうよ~」
「ダメ! この間しんにいに新しいおようふく買ってもらったばっかりだもん! ギターなんて高いものおねがいできないよ!」
「え~、そうかな? むしろ心ちゃんは、美海ちゃんにおねだりしてほしくて頑張って働いてると思うよ♪ だって、自分のことにはぜーんぜん興味ないじゃん!」
「だからよけいにたのめないの!」
「そっか~。じゃあ、俺からプレゼント☆ っていうのは? 弟子に楽器を買ってあげるなんて、なんか師匠っぽくていいじゃん♪」
「……それもダメ! こうたにいに悪いもん!」
「美海ちゃんってば頑固だなぁ。悪くなんてないのに~」
中庭では、美海と虹太が言い争いをしていた。
美海は現在、虹太が使っていないギターを借りて練習している。
だがそれは大人用なので、美海が弾くには大き過ぎるのだ。
(あ、あの人がこうたにいか!? ギターはめちゃくちゃ似合うけど、とてもピアノを弾くようには見えないぞ!? いやー、人は見かけによらないものだなあ!)
虹太の軽やかな見た目とピアニストという単語が、一太の中では結び付かなかった。
「じゃあじゃあ、今度のクリスマスにサンタさんにお願いするっていうのはどう~?」
「サンタさん……!」
「我ながら名案! それなら、誰にも悪くないでしょ?」
「……うん。でも……」
「どうしたの~?」
「……今まで、一度もサンタさん来たことないんだ。サンタさん、みうの家わかんないんじゃないかな……。だからきっと、今年も来ないと思う……」
美海は、そう言った途端にしゅんとしてしまう。
彼女の家は、貧しかった。
それ故、今までクリスマスにプレゼントが用意されたことがなかったのだ。
「それなら安心してよ~! 俺、サンタさんと友達だもん☆」
美海の不安を取り払うように、虹太は明るく笑う。
「えっ!? そうなの!?」
「そうだよ♪ だから、俺がちゃーんとサンタさんに伝えておくよ☆」
「こうたにいすごいね! お友達たくさんいるのは知ってたけど、サンタさんも友達だなんて! ねえねえ、サンタさんってどんな人!? やっぱりおひげがすごいの!?」
「ふふふ、ひみつー♪」
「えー! 教えてよー!!」
ここで、美海は自分たちの後ろに立つ一太と柊平の存在に気付いた。
ギターを丁寧に椅子に置くと、一太に駆け寄ってくる。
「せおせんせー! とうかねえとそうにいとのお話、もう終わったの?」
「おう! バッチリだ! ホットケーキ美味しかったぞ! ありがとうな!」
「えへへ! よかった~!」
「それにしても美海ちゃん、ギター始めたんだな! かっこいいじゃないか!」
「みうなんてまだまだだよ。音を出すだけでせいいっぱいだもん」
「そうか? 先生は、美海ちゃんの音いいと思ったけどな!」
「ほんと!?」
「ああ! 本当だ!」
「みう、これからもがんばってれんしゅうする! もっとうまくなったら、先生にちゃんとした曲をきかせてあげるね! やくそくだよ!」
「わかった! いやー、楽しみだなあ!」
美海は一太と指切りをすると、虹太の元へ戻っていった。
「……よろしければ、柏木の弟の様子もご覧になられますか?」
「はい! ぜひお願いします!」
「かしこまりました。この時間ならば、リビングにいると思います」
柊平に案内され、一太はリビングへと向かう。
そこには、湊人と並んで将棋盤に向かう大和の姿があったのだった――――――――――。