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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十三話 カンナを秘めた訪問者
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不本意な勘違い×2

 数日後の午後三時に、一太は一色邸を訪れていた。

 電話で透花とのアポイントメントを取り付け、午前授業の日を利用してやって来たのだ。


(こ、ここが二人の家なのか……!? 豪邸じゃないか!!)


 一色邸の佇まいに、一太は驚きを隠せない。

 門前で戸惑っていると、庭で作業をしている人物の後ろ姿が目に入った。


(髪を結んでいて華奢だから、女性だな! あの人がお姉さんか?)


 一太は大声で、その人物に声をかける。


「こんにちは! 大和くんと美海ちゃんの担任の瀬尾一太という者です! 家庭訪問に参りました! 二人のお姉さんという、一色透花さんでしょうか?」

「………………………………」

「あ、あの……?」


 距離的に、一太の声が聞こえていないということはないはずだ。

 だが、その人物は振り向くことも、問い掛けに答えることもしない。

 一太が困惑していると、熊のような風貌の男が近付いてきた。


「春原先生! お客様だべ!」

「……聞こえてるよ」


 熊のような男に話しかけられ、漸く口を開く。


(え……!? 声が、低い……!?)


 髪を結った人物の発した声は、女性のものではなかった。

 一太は、理玖の後ろ姿を女性と見間違えていたのだ。


「春原先生! 女の人に間違われたからって無視しちゃダメだべよ~!」

「……うるさいな。あまり無駄口ばかり叩いてると、給料減らすよ」

「そ、そんな殺生な!」

「……嫌なら、作業に戻って」

「わかったべ!」


 理玖は面倒臭そうに一太の方を振り向く。

 華奢ではあるが、その姿はどこからどう見ても男だ。


「も、申し訳ない! 男性の方でしたか!」

「……別に。彼女なら、家の中にいる。門の鍵は開いてるから勝手に入って。玄関に呼び鈴があるから、それを鳴らせば誰か出て来るから」


 それだけ言うと、また作業に戻ってしまった。


「ありがとうございます! 本当に失礼しました!!」


 理玖が既にこちらを向いていないにも関わらず、一太は理玖に深く頭を下げた。

 それから、門を開けて敷地内に入る。


(ま、まさか男の人だったとは……! 二人の日記に書いてあった、お兄さんの一人か? どのお兄さんだ!? なんとなく星に詳しそうだし、みなとにいって人か……?)


 まさかこんな不本意な勘違いをされているとは、理玖は夢にも思わないだろう。

 一太は玄関に着くと、呼び鈴を鳴らした――――――――――。

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