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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十三話 カンナを秘めた訪問者
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熱血教師の奮闘劇、開幕

(う~む……。これは一体どういうことなんだ!? さっぱりわからん!)


 時は、夏休みが終わってすぐのところまで遡る。

 とある場所で、若い男が何かを読みながら頭を捻っていた。

 彼の名前は、瀬尾一太。

 大和と美海の担任教師である。

 彼は今、夏休みの宿題として提出された二人の絵日記を読んでいるのだ。


(二人とも、訳ありの家庭なんだよな。だから、一緒に住んでるとは聞いてたけど……。この日記、登場人物が多過ぎる! 二人とも、歳の離れた兄が一人いるだけのはずなんだが……。姉まで登場してるぞ!? 一体これは誰なんだ!?)


 彼が頭を悩ませているのは、絵日記の内容についてだった。

 それ自体は、楽しい思い出に溢れた素晴らしいものだ。

 二人とも一生懸命に取り組んだことが想像でき、微笑ましい。

 だが彼は、二つの家庭の詳しい事情については知らなかった。

 歳の離れた兄と上京してきて、現在は知り合いの家に身を寄せている。

 一太が知っているのは、これだけだ。

 入学の時に提出された書類には、家族構成について記す欄がある。

 それを見てみると、大和の保護者の欄には蒼一朗の名前が記されていた。


(これが、二人がそういちろうおにいちゃん、そうにいって呼んでる人だな)


 続いて、美海の書類に目を移す。

 保護者の欄には、透花の名前が書いてあった。

 心は未成年であるため、透花の名前で提出していたのだ。


(これが姉か! でも、血の繋がった姉じゃないだろうし……。どういう関係なんだ!?)


 ごく普通の教師である一太は、軍人である透花の名前を知らなかった。

 絵日記には、他の隊員たちについても書かれている。

 その内容から、彼らも一緒に暮らしているであろうことが窺えた。


(一体二人は、どういう環境で生活してるんだ!? 大和くんも美海ちゃんも、年齢の割には聞き分けが良すぎるところがあるし……。なんだか心配になってきた!!)


 大和と美海は、同年代の子どもと比べると格段に落ち着いていた。

 それは生い立ち故のものなのだが、一太がそれを知るはずがない。

 一太は、熱い魂を持った男なのだ。

 一度持った疑問は、徹底的に解明しなければ気が済まない。


(……よし! 思い立ったら即行動! 家庭訪問だ! 二人がどんな家庭で暮らしているのか見に行こう! そうと決まれば早速……!)


 書類を見ながら、どこかに電話をかける。

 こうして、熱血教師の奮闘劇が幕を開けたのだった――――――――――。

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