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いつか掴まえてみせる
蒼一朗が駅伝部に入部してから数日が経ったこの日、透花と蒼一朗はいつものコースを二人で走っていた。
「蒼一朗さん、駅伝部の練習はどう?」
「んー、別に楽しくやってるぜ。一つの目標のために全員で努力するのって、今までやったことなかったんだけどいいもんだな」
「そうだね。うちはみんな基本的に個人プレイだから、そういう経験は得られないもんね。存分に外部で学んできなさいな」
「……今のうちに余裕こいてろよ。そのうち絶対に俺が勝って、駅伝部を紹介したことを後悔させてやるからな」
「あはは、楽しみにしておくね。じゃあ、今日も勝負しようか?」
「いいぜ。今日こそ俺が勝って、高い焼肉を奢ってもらうからな」
「そんな簡単に負けるようじゃ、あなたたちの隊長は務まりませんって。この間は諦めたけど、今日こそボヌールのチョコ食べさせてもらうからね!」
その後の勝負は、いつも通り透花の勝ちだった。
しかし、蒼一朗の表情が先日までとはどこか違って見える。
彼が彼女の華奢な背中を捉えるのは、そう遠くない日のことなのかもしれない――――――――――。