さよならではなく、行ってらっしゃい
翌朝目覚めたぱかおは、心のよく知るいつもの彼だった。
昔のように瞳はキラキラと輝いており、コミュニケーションをとることができる。
ぱかおの両親は、成長によって起こるアルジャンアルパガの巨大化、それを自らコントロールするためには修業が必要だということをぱかおに説明した。
そして修業は、人里から離れた場所で行わければならないことも――――――――――。
(ちゃんと修業すれば、もうあんな風にはならないんだよな?)
(ああ、そうだ)
(ちゃんと自我を保ったまま、大きくなることができるのよ)
(じゃあ、オレは行くぞ!)
(本当にいいんだな……?)
(修業を終えるまでの数年間は、ここには戻ってこれないけれど……)
(シンに会えないことよりもまた傷付けちゃう方がオレは嫌だ! だから修業するんだ!)
(……息子よ。立派になったな)
(本当に。私たちの知らないところで、いつの間にか大人になっていたのね……)
ぱかおはぴょんと心の膝に乗ると、心を見つめる。
その視線は、いつもよりも大人びたものだった。
(シン! オレ、行ってくるぞ!)
「……うん。修業、頑張って」
(おう! ないとは思うけど、オレのこと絶対に忘れるなよ!)
「忘れないよ……。忘れるはず、ない……。ぱかおも、僕のこと……」
(忘れるわけないだろ! 離れてても、オレたちは親友だ!)
「うん……」
(……必ず戻ってくるから、お別れの言葉なんて言わないからな)
「わかった……。……気を付けてね」
(ああ! 行ってきます!)
「……行ってらっしゃい!」
こうしてぱかおは、自らの足で屋敷を出て行った。
「ぱかお、待ってるからね……。早く、帰ってきて……」
ぱかおがいなくなった部屋で心が呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく朝の澄んだ空気に溶けていくのであった――――――――――。