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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十二話 ディモルフォセカな君が好き
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さよならではなく、行ってらっしゃい

 翌朝目覚めたぱかおは、心のよく知るいつもの彼だった。

 昔のように瞳はキラキラと輝いており、コミュニケーションをとることができる。

 ぱかおの両親は、成長によって起こるアルジャンアルパガの巨大化、それを自らコントロールするためには修業が必要だということをぱかおに説明した。

 そして修業は、人里から離れた場所で行わければならないことも――――――――――。


(ちゃんと修業すれば、もうあんな風にはならないんだよな?)

(ああ、そうだ)

(ちゃんと自我を保ったまま、大きくなることができるのよ)

(じゃあ、オレは行くぞ!)

(本当にいいんだな……?)

(修業を終えるまでの数年間は、ここには戻ってこれないけれど……)

(シンに会えないことよりもまた傷付けちゃう方がオレは嫌だ! だから修業するんだ!)

(……息子よ。立派になったな)

(本当に。私たちの知らないところで、いつの間にか大人になっていたのね……)


 ぱかおはぴょんと心の膝に乗ると、心を見つめる。

 その視線は、いつもよりも大人びたものだった。


(シン! オレ、行ってくるぞ!)

「……うん。修業、頑張って」

(おう! ないとは思うけど、オレのこと絶対に忘れるなよ!)

「忘れないよ……。忘れるはず、ない……。ぱかおも、僕のこと……」

(忘れるわけないだろ! 離れてても、オレたちは親友だ!)

「うん……」

(……必ず戻ってくるから、お別れの言葉なんて言わないからな)

「わかった……。……気を付けてね」

(ああ! 行ってきます!)

「……行ってらっしゃい!」


 こうしてぱかおは、自らの足で屋敷を出て行った。


「ぱかお、待ってるからね……。早く、帰ってきて……」


 ぱかおがいなくなった部屋で心が呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく朝の澄んだ空気に溶けていくのであった――――――――――。

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