誰も君を傷付けたりしないから
いくら草食動物とはいえ、今のぱかおはキリンほどの大きさがあるのだ。
噛まれれば、深手を負うのは目に見えていたはずだ。
「ぱかお、大丈夫だよ……。怖いことなんて、何もないから……」
だが、心は逃げなかった。
傷口からは血が溢れ出しているが、それを気にせずにぱかおを優しく撫でる。
「不安、なんだよね……。急に体が大きくなっちゃったことが……。自分でコントロールする方法も分からないし……。でも、安心して。ぱかおの見た目が変わったくらいで、僕はぱかおを嫌いになったりしないよ。なんにも心配することなんてないんだ」
(………………………………!! ホ、ントウカ……?)
ここで、初めて反応が返ってきた。
ぱかおの瞳に、少しずつ光が戻っていく。
自我を取り戻そうと、必死に戦っているのだろう。
「もちろん。……ぱかおは、みんなとは違う色の僕の目を気持ち悪いと思ったことある?」
(ナイ……。ソンナコト、アルワケナイだろ……! シンの目は、とってもキレイだ!)
「僕も同じだよ。僕は、昔みたいに小さくてかわいいぱかおも、今の大きくてかっこいいぱかおも、どっちも大好き。誰も君を傷付けたりしないから、安心して」
(シン……! オレも、お前が大好きだ……!)
正気を取り戻したぱかおの体が、自然と小さくなっていく。
そしてそのまま、心の腕の中に飛び込んだ。
心も、それをしっかりと受け止める。
(シン……! また噛んじゃって、ごめん……!)
「……大丈夫だよ。全然痛くない」
(嘘だ……! こんなにいっぱい血が出てるのに……!)
「僕が、ぱかおに嘘吐いたことある……?」
(それは、ないけど……)
「うん。だから、今回もほんと。僕強いから、全然へっちゃらなんだ」
(シン……!)
二人はそのまま、しばらく抱き合っていた。
だが、体力と精神力を大きく消耗したぱかおはいつの間にか眠ってしまう。
その姿を見ると、心も安心したように地面に倒れ込んだのだった――――――――――。