話をしよう
(息子よ! 落ち着きなさい!)
(私たちの声を聞くのです……!)
両親が必死に話しかけるが、その声は届いていない。
ぱかおは自我を失ったまま、苦しそうに唸るだけだ。
(ぱかお、どうしたの……? 僕に、何かを伝えようとしてる……?)
心にはそれが、何らかの意思表示に見えた。
ゆっくりと、ぱかおの方へ歩いていく。
「ぱかお、大丈夫だよ……。話したいことがあるなら、ちゃんと聞くから……」
(それ以上近付いてはなりません!)
(今の息子はあなた様が知っている息子ではないのです! どんな危害を与えるか……!)
「心くん……!」
庭に、澄んだ声が響き渡る。
それは、今まで聞いたことがないくらい慌てたものだった。
「透花さん……。平気だから、そこで見てて……」
そこには、透花がいた。
庭に心とぱかお、そして見知らぬアルパカたちがいることに気付きやって来たのだ。
こちらに近付いて来ようとした透花を制すと、心は歩みを進める。
そしてぱかおの前まで来ると、いつものように優しくその体に触れた。
「ぱかお……。君が伝えたいこと、全部話して……。全部、ちゃんと聞くから……」
急に体に触れられたことにより、ぱかおは気が動転してしまう。
心を睨むと、大きく口を開けた。
(息子よ……! やめなさい……!)
(お逃げください……!)
「………………………………!」
両親が巨大化をしてぱかおを止めようとしたが、間に合わない。
そのままぱかおは、心の肩から腰にかけて勢いよく噛み付いたのだった――――――――――。