僕だけに聞こえる声
ぱかおが巨大化したことの情報共有と、今後の対策を練るための話し合いが行われた。
その大きさを聞き、湊人の笑顔が引き攣っていたのは見間違いではないだろう。
全員でいくら考えても、有効な手立ては思い浮かばなかった。
その結果、現状維持という措置が取られることになる。
ぱかおは毎夜出掛けるが、一色邸に必ず帰ってくるのだ。
銀色の化け物の噂は王都に出回っているが、その姿を完璧に捉えられた者はまだいない。
湊人による情報操作のおかげで、この噂はこれ以上大きくならなかった。
夜になれば、柊平と蒼一朗はぱかおがいつも引き返してくる地点で待ち伏せする。
理玖は図書館に通い詰め、湊人はインターネット上から有用な情報を探した。
その他の隊員たちも、自分にできること精一杯をやっている。
解決策が見つからないまま、ぱかおの方に変化があった。
今までは、毎晩出掛けては王都を走り回り、とある地点で引き返してきていた。
その外出の頻度が、二日に一回、三日に一回、四日に一回と少なくなってきたのだ。
だが、その分長い距離を走るようになってしまった。
引き返してくる地点も、少しずつ一色邸から離れ故郷の森に近付いている。
屋敷では相変わらず、睡眠と食事を繰り返す日々だった。
誰が話しかけても、ぴくりとも反応しない。
「……ぱかお、今日は部活で先生に褒められたんだよ。元気になったら見せてあげるね」
心は、寝る前にぱかおに一日の出来事を伝えるようになった。
ぱかおが応ずることはないが、心はそれを止めずに毎日続けている。
そんな、ある日のことだった。
(……息子よ。こちらに来なさい)
(何度呼んでも王都から出ようとしないので、父と母が迎えに来ましたよ)
寝る準備をしていた心の耳に、聞き慣れない動物の声が届く。
不思議に思い窓から庭を覗くと、そこには――――――――――。
(銀色の、アルパカが二匹……。ぱかおの、お父さんとお母さん……?)
ぱかおと同じように銀色の毛を纏った二匹のアルパカが、こちらを見上げていたのだった――――――――――。