大切なことは変わらないんだ
心たちは、発信機の情報を追いながら一色邸へと戻る。
その赤い点は、一直線に屋敷へと向かっていた。
「それにしても、ぱかおがあんなに大きくなれるなんてびっくりしたよね~」
「すげービビったっす! あんなにデカい動物見たら、湊人さん腰抜かしちゃいますよ!」
「大きくなってこんなに遠くまで走ってたんですから、お腹が空くのも当たり前ですよね」
「首輪がきつそうでかわいそうだったなぁ。でも、外すわけにもいかないし……」
帰りの車内も、行きと変わらず和やかな雰囲気だった。
大きくなったぱかおと対峙した時は、言葉を失っていたにも関わらずだ。
「……みんな、あれがぱかおだって信じてくれるんだね」
心が、ぽつりと呟く。
それに対してなんでもないことのように言い放ったのは、颯だった。
「当たり前じゃん! お前がぱかおを見間違うなんてあるわけないし!」
「そうだよ☆ 見た瞬間は、え!? マジでこれがぱかお!? って思ったけどね~」
「僕もとても驚きました。明日からは、もっと美味しいご飯を用意してあげないとですね」
虹太も晴久も、姿が変わってしまったぱかおのことをもう受け入れているようだ。
その様子をぽかんと眺めている心に、透花は優しい声で語りかける。
「ぱかおが大切な仲間だということは、見た目が違っても変わらないよ。これからどうするかは、明日起きてからみんなで考えよう。だから、帰ったらまずはゆっくり休もうね」
「……ん。ありがとう……」
ぱかおの様子を心配しているのは、心だけではないのだ。
それぞれがぱかおのことを大切に想い、気にかけている。
そんな単純なことを指摘されるまで気付かないほど、心は追い詰められていたのだろう。
屋敷に戻った心は、この日もぱかおを抱いて眠った。
その寝顔は、久方ぶりに安らかなものだったという――――――――――。