湊人の仮説
ぱかおが深夜に出掛けていることが判明してから、あっという間に数日が経った。
その間もぱかおは、毎日夜になると家を空けている。
透花と柊平、蒼一朗が中心になって追っていたのだが、彼らにも疲労の色が見えてきた。
夜は眠れないし、ぱかおのスピードが速過ぎて車でも追いつくことができないのだ。
湊人が発信機の情報をカーナビゲーションシステムに組み込んだため、居場所を特定できるのが唯一の救いと言ってもいいだろう。
「少しいいかな。彼の深夜徘徊について、僕なりの仮説を立ててみたんだけど」
その日の夜、湊人によって全員がリビングに集められた。
大和と美海は既に寝ているため、この場にはいない。
全員が集まると、湊人はプロジェクターを使用しながら説明を始めた。
「これは、ここ数日でぱかおが走ったルートを示してる」
そこには、一色邸を中心とした王都の地図が表示されていた。
ぱかおが走ったと思われる道は、赤線で描かれている。
「その日によって、走る道は少しずつ違うみたいだ。だけど毎日、必ず同じ場所まで行ってからこの屋敷まで引き返して来てる。それがここなんだけど……」
湊人が操作すると、その場所が点滅を始めた。
「……こっちの方向に何があるか、透花さんならもう気付いてるよね?」
「……私に言わせなくても、自分で言えばいいのに。相変わらずいい性格してるなぁ」
「ふふっ、今日も褒め言葉をありがとう」
透花はため息を一つ吐くと、重い口を開いた。
「……ぱかおが心くんと会った、森があるね」
「その通り。……もしかして彼、野生に戻りたいって思ってるんじゃない?」
その言葉に、心は自分の頭が真っ白になるのを感じた――――――――――。




