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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十二話 ディモルフォセカな君が好き
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桜色のわっか

 夜になると、透花が心の部屋を訪ねてきた。


「心くん、これ」

「なに……?」


 透花が差し出したのは、ピンク色の輪っかだった。

 大きさ的に、ぱかおの首輪だろうか。


「うん。湊人くんにお願いして作ってもらった、発信機付きの首輪だよ。これを付ければ、もしぱかおがどこかに行ってしまっても場所が分かるから」

「ん……」


 心はそれを受け取ると、寝ているぱかおの首に巻く。

 ぱかおは普段、首輪を付けてはいない。

 一人でどこかに出歩くということは、今まではなかったからだ。


「もしかしたら今日も、ぱかおは夜中にこの屋敷を出て行くかもしれない。気付かなかっただけで、今までもそうだったのかも……。一番辛いのは心くんだと思うけれど、捜索は私や柊平さん、蒼一朗さんたちに任せてもらえないかな」

「え……? なんで……?」

「真夜中に高校生を出歩かせるわけにはいかないからね」

「でも……」


 その提案に、心はすぐさま頷くことができなかった。

 ぱかおのことを誰よりも心配しているのは、心なのだ。

 屋敷でただ待っているだけというのは、あまりにも酷な話である。


「夜はちゃんと寝ないと。学校に行けなくなっちゃうよ」

「………………………………」

「ぱかおが元気になった時に、自分のせいで心くんが学校を休んだって知ったらどう思うかな? 私は、悲しむと思う」

「うん……。僕も、そう思うよ……」


 心は、特別頭がいいというわけではないし、勉強が好きなわけでもない。

 だが、故郷では学校へ通うことが出来ず、教育を受ける権利すら与えられなかった。

 なので、王都に来て普通に高校へ通えるのがとても嬉しいことなのだ。

 学校は楽しいという話を、心はいつもぱかおにしていた。

 その楽しみを自分が奪ったとなれば、ぱかおは間違いなく悲しむだろう。


「……透花さん。ぱかおのこと、よろしくお願いします」

「任せて。何か変わったことがあれば、すぐに心くんに報告するからね」

「……ありがとう」

「いえいえ。じゃあ、今日はもう寝た方がいいよ。昨日はほとんど眠れなかったでしょう?」

「ん……」

「ゆっくり休んでね。おやすみなさい」

「おやすみなさい……」


 透花は心の頭を優しく一撫ですると、部屋を出て行った。


(寝たく、ない……。でも、寝なきゃ……)


 心は昨日と同じようにぱかおを抱くと、ベッドに横になる。

 すると、昨晩はほとんど眠れなかったのですぐに眠気が襲ってきた。

 そのまま目を閉じると、朝までぐっすりと眠ったのだった――――――――――。

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