足よりも痛むのは
心が一色邸を出てから、どれくらいの時間が経っただろうか。
必死に走り回ってはみたものの、ぱかおを見つけることはできなかった。
(ぱかお、なんで……? どこ行っちゃったの……?)
心の脳裏を、昼間に聞いた噂話が過ぎる。
(銀色の化け物が、ぱかおのことだったらどうしよう……。僕が見つける前に、誰かに見つかっちゃったら……? もしこのまま、帰ってこなかったら……!?)
混乱している心の肩に、ふわりと何かが掛けられた。
「心くん、見つけた」
「あ……」
「まだまだ暑いけれど、少しずつ涼しくなってきているからね。さすがに、夜はパジャマだけじゃ風邪をひいちゃうよ。私の上着だけど、よかったら着ていて」
「透花、さん……」
透花はどうやら、心を追いかけて来たようだ。
後ろには柊平が運転する車が見えるので、これに乗って来たのだろう。
透花の顔を見ていると、心の混乱は徐々に治まっていった。
「帰ろう、心くん。足の手当てもしないと」
「足……?」
「うん。裸足で走ったから傷だらけだよ。理玖に診てもらおうね」
「ほんとだ……」
ここで初めて、心は靴を履いていないことに気付いた。
それほど、一生懸命ぱかおを探していたのだ。
「でもまだ、ぱかおが……」
「屋敷に残ってる蒼一朗さんから連絡が来たんだけど、ちゃんと戻ってきたから安心して」
「ほんと……?」
「うん。帰ってきたらすぐに寝ちゃったみたいだけど、怪我とかもしていないって」
「そっか……。よかった……」
「だから帰ろう。ぱかおが起きたら話を聞こうね」
「わかった……」
透花に優しく促されながら、心は車に乗り込む。
そして、一色邸へと戻っていくのだった――――――――――。