表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十一話 ライラックの香りを求めて
331/780

あなたの涙をください

「そういえばさ、ハルヒサはなんでこの海にいたわけ?」


 すっかり元気になったクレアが、晴久に話しかけてくる。


「あの、僕、人魚の涙が欲しくて……」

「人魚の涙? なんでそんなのが欲しいの?」

「実は……」


 晴久は、この海に来た経緯をクレアに説明した。

 とある美食家が、想い出の味を探し求めていること。

 それを完成させるには、人魚の涙が必要なのかもしれないこと。

 晴久の話を、クレアは興味深そうに聞いている。


「……というわけなんです」

「なるほどねー! 確かにアタシ、昔トモヒサに自分の涙をあげたことある!」

「ほ、ほんとですか……!?」

「うん! トモヒサが帰っちゃうのが寂しくて、大泣きしたんだよね! それで餞別に涙をあげたんだ! どんな効果があるのかわかんないけど、ニンゲンにとっては貴重な物だと思ったし! アタシのことも忘れてほしくなかったからね!」

「僕にも涙をいただくことはできないでしょうか……!?」

「別にいいよー!」

「い、いいんですか……!?」

「うん! だって、アタシの勘違いでここまで連れてきちゃったわけだし。それに、トモヒサのことも教えてくれたしね。ハルヒサが来てくれなかったら、これからもずっとトモヒサのこと待ってたと思うんだ。だから、お詫びとお礼に涙くらいいくらでもあげるよー!」

「ありがとうございます……!」

「でもさー、どうやって泣けばいい?」

「あ、そうですよね……」

「トモヒサの時は、悲しくて勝手に涙が溢れてきたんだ。でも正直、ハルヒサはアタシのタイプじゃないからそこまでなんないだろうし……」

「な、なんかごめんなさい……」

「んーん。それにしても困ったねー……」


 二人は考え込んでしまう。

 泣くという行為を意識して行うのは、案外難しいものなのだ。


「とりあえずハルヒサ、なんか話してみてよ! 泣ける話があるかもしんないじゃん!」

「え……!?」

「今のニンゲンがどんな暮らしをしてるのかも知りたいし! なんでもいいから話して!」

「本当に、なんでもいいんですか……?」

「うん! 五十年ぶりにニンゲンのおしゃべりが聞けるんだから、アタシ超楽しみ!」

「……わかりました。じゃあ……」


 晴久は、今の人間の暮らしや、自分がどのような生活をしているのかを語り出した。

 その話を、クレアは瞳を輝かせながら聞いているのだった――――――――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ