普段の行いがいいからです
翌日、晴久、柊平、蒼一朗、透花の四人は海にいた。
晴久の探す食材は、海の中にあるのだ。
船舶免許を持つ柊平が船の運転をし、泳ぎの得意な蒼一朗が海に潜って食材を探す。
透花は泳げないため、晴久も体調に何かあったら困るため船上で待機である。
蒼一朗一人で探すのは効率が悪いため、本来ならもっと人手が欲しかった。
しかし急なことだったので、都合をつけられる者がこれだけしかいなかったのだ。
「うーっし、じゃあ探すか。その食材ってどんなのなんだ?」
「…笑わないで聞いてもらえますか?」
「おう」
「……人魚の涙です」
「……は?」
晴久の発言に、蒼一朗は口を開けて呆けてしまう。
柊平も、無表情ながらに驚いているように見えた。
「……わりい、ハル。もう一回言ってくんねーか?」
「人魚の、涙です……」
晴久の声は、先程よりも小さくなってしまった。
人魚そのものが、この世界では架空の生物なのだ。
蒼一朗と柊平が驚くのも、晴久が伝えることを戸惑うのも当たり前だろう。
「……わかった。とりあえず、人魚を探せばいいのか?」
「え……?」
だが、蒼一朗はすぐにいつもの表情に戻ると準備運動を始める。
これには、晴久が驚かされてしまった。
「し、信じてもらえるんですか……?」
「ああ。だってうちには、動物と話せる奴とか銀色のアルパカとかいるんだぜ? 光る花もあるみてーだし。それなら、人魚がいてもおかしくねーだろ? それに……」
「それに……?」
「ハル、嘘吐くような奴じゃねーじゃん」
「蒼一朗さん……! ありがとうございます……!!」
「お礼を言うのがはえーよ。ちゃんと見つけてから言ってくれ」
ここで、二人の様子を見守っていた透花が声をかける。
「蒼一朗さん、よろしくね。水中じゃ何かあっても助けに行けないから、充分に気を付けて」
「へいへい。とりあえず、探せる範囲で探してみるわ。じゃあ、行ってくるな」
準備運動を終えた蒼一朗は、勢いよく海の中に飛び込む。
こうして、人魚探しが始まったのだった――――――――――。