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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十一話 ライラックの香りを求めて
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それでもまだ、近付けない。

 ぱかおに嗅いでもらうと、どの花も食用として問題ないことが発覚する。

 味にはそれほど差がなかったので、晴久は香りが強いサンティエールを使うことにした。

 他の二つは、太陽光や月光を浴びせなければ光らない。

 使用するには条件が厳しいため、必然的にサンティエールしか残っていなかったのだ。

 蒸す、焼く、煮るなどの様々な調理法を試し、晴久は香りをほぼ消すことに成功した。

 そして、それを粉末状にしスープに混ぜると――――――――――。


(すごいです……! サンティエールの光が、スープ全体を輝かせてくれています……!)


 眩い光を放つ、美しいスープが完成したのだ。

 試しに飲んでみたが、味のバランスも崩れていない。


(これなら、桜庭さんの追い求める品に近付けているかもしれません……!)


 晴久は、すぐにスープを皿によそって廉太郎の元へと運ぶ。

 そして、扉をノックし部屋に入っていった。


「失礼します」

「遠野くん、待っていたよ」


 廉太郎に料理を食べてもらうのも、もう五回目だ。

 晴久は、慣れた手付きでテーブルに皿を置く。


「……今の僕ができる精一杯を、このお皿に込めました」

「なんて、美しいスープなんだ……」


 光り輝くスープに、廉太郎は感動しているようだ。

 嬉しそうにスプーンを握ると、穏やかな笑顔を浮かべる。


「では、いただくよ」


 そして、その美しい品を口に運んだが――――――――――。


「………………………………」


 廉太郎の表情が曇ったことに、晴久はすぐに気付く。

 彼はそのまま、スプーンを置いてしまったのだった。

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