それでもまだ、近付けない。
ぱかおに嗅いでもらうと、どの花も食用として問題ないことが発覚する。
味にはそれほど差がなかったので、晴久は香りが強いサンティエールを使うことにした。
他の二つは、太陽光や月光を浴びせなければ光らない。
使用するには条件が厳しいため、必然的にサンティエールしか残っていなかったのだ。
蒸す、焼く、煮るなどの様々な調理法を試し、晴久は香りをほぼ消すことに成功した。
そして、それを粉末状にしスープに混ぜると――――――――――。
(すごいです……! サンティエールの光が、スープ全体を輝かせてくれています……!)
眩い光を放つ、美しいスープが完成したのだ。
試しに飲んでみたが、味のバランスも崩れていない。
(これなら、桜庭さんの追い求める品に近付けているかもしれません……!)
晴久は、すぐにスープを皿によそって廉太郎の元へと運ぶ。
そして、扉をノックし部屋に入っていった。
「失礼します」
「遠野くん、待っていたよ」
廉太郎に料理を食べてもらうのも、もう五回目だ。
晴久は、慣れた手付きでテーブルに皿を置く。
「……今の僕ができる精一杯を、このお皿に込めました」
「なんて、美しいスープなんだ……」
光り輝くスープに、廉太郎は感動しているようだ。
嬉しそうにスプーンを握ると、穏やかな笑顔を浮かべる。
「では、いただくよ」
そして、その美しい品を口に運んだが――――――――――。
「………………………………」
廉太郎の表情が曇ったことに、晴久はすぐに気付く。
彼はそのまま、スプーンを置いてしまったのだった。