美食家、桜庭廉太郎
翌日、王宮へと向かった晴久は厨房へと通された。
まずは提示されたレシピを元に作り、その品が認められれば再現へと進めるらしい。
この厨房での調理も、もう三回目になる。
相変わらず監視の視線には慣れないが、晴久は落ち着いて料理を仕上げていった。
出来上がると、それを持って美食家の桜庭廉太郎が待つ部屋へと向かう。
「し、失礼します……!」
「……入りなさい」
扉をノックすると、中から声が返ってきた。
それは、予想よりも遥かに大らかなものだった。
一流のシェフたちの料理を口に合わないと言い切るような気難しさは感じられない。
「こ、こんにちは……! 料理をお持ちしました……!」
「……ここに置いてもらえるかな?」
「はい……!」
晴久は部屋に入ると、廉太郎が待つテーブルへと歩いていく。
そして、丁寧な仕草で皿を置いた。
彼が持ってきたのは、魚介をふんだんに使ったトマトスープである。
「こちらがその品になります……!」
「ふむ……。では、いただこう」
廉太郎はスプーンを手に取ると、料理を口に運んだ。
少しだけ目を見開くと、二口、三口と食べ進めていく。
(気に入ってもらえた、んでしょうか……?)
スプーンが止まるまで、晴久はその様子をじっと見ていたのだった――――――――――。