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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十話 誕生日にはポインセチアを添えて
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待たせてごめんね

「蒼一朗さん、二人に手錠を」

「お、おう……」


 その場の誰もが、何が起こったのか分からなかった。

 切り札の武器を吹き飛ばされてしまった男は、すっかり戦意を喪失している。

 大人しく、蒼一朗に手錠を掛けられるだけだ。

 その様子を見届けた透花は、子どもたちに近付いていった。

 そして、優しい手つきで腕を縛っていた縄を解く。


「琉生様、美海ちゃん、大和くん。来るのが遅くなってごめんね」

「とうかねえ……!」

「………………………………!!」


 美海と大和は、涙を流しながらすぐに透花に抱き付いてきた。

 だが、琉生はその場に留まったままだ。


「すっごくこわかったよ……!」

「………………………………!!」

「……そうだよね。本当に、無事でよかった」

「るいくんが、みうたちのことまもってくれようとしたんだよ……!」

「………………………………!」


 美海の言葉に、大和も大きく頷いている。


「そうだったのですね。琉生様、ご自身の国民を守ろうとするとはご立派です」

「……やめてくれ。余は、そのようなつもりでやったのではない」

「……失礼いたしました」

「余はただ、自分のせいでともだちがきずつくのがいやだっただけじゃ……!」


 そう言った琉生の瞳から、涙がぽろぽろと零れ落ちた。

 透花と言葉を交わしたことによって、助かったという実感が湧いたのだろう。

 そんな彼を、透花は優しく手招きする。


「……琉生様もいらっしゃってください。人肌の温かさは安心するものですよ」

「うむ……!」


 漸く動き出した琉生は、大和や美海とは違い透花の背中へと抱き付いた。

 泣き顔を見られるのが、嫌なのかもしれない。

 そんな琉生の手を、透花はゆっくりと撫でる。


「……先程の行為は、一人の人間として素晴らしいことだと思いますよ」

「……一色殿、ありがとう」

「いえ。みんな、怖い思いをさせてごめんね。全員が無事で、本当によかった」


 透花が三人を抱き締めると、彼らは更に強く抱き付いてくる。

 しばらくの間、四人はそのまま静かに過ごしたのだった――――――――――。

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