砕かれたもの
男たちは迷うことなく、透花へと襲い掛かった。
丸腰の華奢な女性を先に狙うのは、当たり前のことだろう。
透花は、余裕を持った動きでその攻撃を躱す。
「な、なんだこいつ……!?」
「簡単に躱しやがっただと……!?」
男たちが驚いた時にできた隙を、蒼一朗は見逃さない。
「よそ見してたら危ねーぞ……!」
「ぐはっ……!」
蒼一朗の拳が、片方の男の腹部にめり込んだ。
男はそのまま、意識を失い膝から崩れ落ちてしまった。
「余裕だな」
「蒼一朗さん、ナイス」
「さて、次は……」
二人が、もう一人の男の方へ向き直った時だった。
「くっ、来るんじゃねえ……! これ以上近付いたら、こいつの頭を吹っ飛ばすぞ……!」
男は、いつの間にか子どもたちの横に移動していた。
そして、懐から取り出した銃を琉生の頭に当てている。
彼に課された本来の任務は、琉生を無傷で連れ帰ることだった。
だが、それを忘れてしまうほど焦っているらしい。
「お前らにとって、このガキは大切だもんなぁ……? 迂闊に手出しできねーだろ……?」
「おいおい、これはちょっとやべーんじゃ……」
――――――――――パン。
蒼一朗が言いかけたところで、倉庫に乾いた音が伝わる。
それは確実に、男の手元からだった。
「なっ……!」
「……誰が、何を吹き飛ばすの? よく聞こえなかったから、もう一度教えてもらえるかな」
静かに怒りを宿した透花の声が、その場に響き渡る。
吹き飛んだのは、琉生の頭ではない。
しっかりと男が握っていたはずの銃は、いつの間にか背後の壁に叩き付けられ粉々になっていた――――――――――。