支配された子どもたち
時間は、少しだけ前へと遡る。
「おら! ここに座ってろ!」
「王子だけって話だったのによぉ……。別のガキもいたから無駄に疲れたぜ」
「……大人しくしていろ。そうすれば、お前たちに危害は加えない」
琉生と美海、大和は両手を縄で縛られ、簡素なパイプ椅子に座らされる。
バルコニーに出たところを捕えられ、車に乗せられてこの倉庫まで運ばれてきたのだ。
男たちは、三人のグループだった。
年齢はバラバラで、颯や心と同年代に見える者もいるようだ。
彼らは、透花たちがこの場所に向かっていることなど知らない。
「それにしても、簡単な仕事だったよなぁ! 王宮の警備があーんなにザルだなんてよ!」
「ほんとほんと! お前もよくやった! お手柄だぜー?」
「う、うん……」
そう声をかけられたのは、琉生を誘い出した少年だ。
彼は、やはり男たちの協力者だったのだ。
「……気を抜くなよ。まだ、仕事が終わったわけじゃない」
「わかってるよ! でも、もうほとんど終わったようなもんだろ?」
「そうそう! 後はこいつらを連れてトンズラするだけなんだからさぁ!」
「……逃げるための船が到着していないか見てくる。お前も来い」
「わ、わかった……」
三人の中で一番若く落ち着いた男が、少年を連れて倉庫を出て行く。
残された二人は、ニヤニヤと笑いながら琉生たち三人を見ていた。
「お、お主らのねらいは余じゃろう! 二人は関係ない! かいほうしてやってくれ……!」
「る、るいくん……」
「………………………………」
「おーおー。勇敢な王子様だねぇ」
「でも、それはできないんだわ」
「な、なぜじゃ……!?」
「まぁ、大した理由じゃねーけど。人数は多い方がいいんだよね」
「そうそう。悪いようにはしねーから大人しくしとけよ。……痛めつけられたくないだろ?」
琉生の懸命の訴えも、一蹴されてしまう。
恐怖に支配された三人の体は、自然と震え出した。
(こわいよ……! みうたち、これからどうなっちゃうの……!? だれかたすけて……! しんにい……! とうかねえ……!)
美海がそう思った、瞬間だった。
倉庫の重い扉が、静かに開いたのは――――――――――。