誘拐計画を阻止せよ
「じゃあ次に……」
「……ちょっと待てよ」
謎の少年をキーパーソンとして話を進めようとする透花に物申す人物がいた。
蒼一朗である。
「どうしたの?」
「いや、子どもを共犯者みたいに考えるのはこう、釈然としねーっつーか……」
琉生を連れ出した少年は、弟である大和と同じくらいの年に見えた。
そんな子どもが今回の事件の重要人物であるとは、蒼一朗は考えたくないのだろう。
「今回の事件の鍵を握っているというだけで、共犯者だと思っているわけではないよ。子どもだから、誰かに利用されているって線の方が大きいのではないかな」
「利用……?」
「うん。子どもなら、怪しまれずに琉生様に近付き連れ出すことができる。招待状を持っていなくても、誰かの後ろを歩いて会場に入れば疑われることもない」
「そんな風に考えた大人に、利用されたってことか……?」
「うん。どうかな。納得してもらえた?」
「……ああ。悪い、急に突っかかって」
「大丈夫だよ。その優しさが、蒼一朗さんのいいところだからね」
透花は蒼一朗に笑顔を向けてから、話を進め始めた。
「……じゃあ、本題に戻るね。今話したように、その男の子が深く関わっていることは間違いないけれど、別に黒幕がいると私は考えています。数人の子どもが一気にいなくなったことから、相手も複数だと思う。子どもとはいえ、一人で二人以上の人間を連れ去るのは大変だからね」
「あ、さっきの……」
静かに透花の話を聞いていた心が、口を開いた。
先程透花に言われたことに、心当たりがあったのだろう。
「うん。心くんが一緒でも防げなかったかもしれないって言ったのは、こういう理由です。むしろ心くんごと攫われていた可能性もあるから、無事でよかったよ」
「透花さん、ありがと……」
「いえいえ」
心に、透花は笑顔を返した。
「子どもだけでどこかに行ってしまったという線は、捨てていこうと思う。琉生様は幼いけれどしっかりとした方だから、自分が大人に知らせずにいなくなればどういうことになるかはわかっているでしょう。これは、大和くんや美海ちゃんにも同じことが言えるよね。今回の件は、綿密に計画された琉生様誘拐計画として今後私たちは動きます。みんなを保護して、黒幕を捕まえること。それが一色隊に課せられた任務だよ」
透花の言葉に、全員が頷く。
こうして一色隊の、琉生、大和、美海を保護するための戦いは幕を開けたのだった――――――――――。