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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第三十話 誕生日にはポインセチアを添えて
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招かれざる客

「まずは、状況を整理しよう」


 一色隊は、会場の片隅で話し合いを始めた。

 ちなみに、琉生が行方不明になったことは招待客たちには知らされていない。

 無用な混乱を防ぐための措置だった。


「では、柊平さんから。琉生様が席を立たれた時のことを、詳しく聞かせてもらえるかな」

「……かしこまりました。琉生様への挨拶の客が、途切れた瞬間があったのです。そこに、一人の少年がやって来ました。バルコニーで月を見ようと誘われたようで、王様はそれを快諾されました。そして、二人で連れ立ってバルコニーに向かわれたのですが……」

「その時に、二人に護衛の者はつけなかったの?」

「……はい。バルコニーはすぐそこだったので、王様が従者はいらないと仰いました。相手が少年だったので、こちらとしても何かが起こるとは思えませんでした」

「なるほど。それで、バルコニーに行く途中の二人に会ったのが……」

「僕、だよ……」


 心が、小さく手を上げた。

 四人がいなくなってしまったことに責任を感じているのだろう。

 ずっと俯いたまま、顔を上げようとはしなかった。


「その時のことを、詳しく聞かせてもらってもいい?」

「……うん。僕が美海と大和くんと三人でいたら、二人が来たんだ……」

「理玖とハルくんは一緒じゃなかったの?」

「……お手洗いに」

「ごめんなさい。僕は人に酔ってしまったので、少し会場の外に出ていたんです……」

「生理現象に体調不良は自分でもどうにも出来ないことだから仕方ないよ。心くん、それからどうしたか教えてくれるかな」

「……二人が月を見に行くって聞いたら、美海も行きたいって言い出したんだ。それに、大和くんも頷いて……。僕も一緒に行こうとしたんだけど、新しい料理が運ばれてきて……。思わずそれを見てたら、僕はご飯を食べてていいって美海が言ってくれたんだ……」

「それで、四人だけでバルコニーに向かったんだね」

「……うん。ごめんなさい……」

「どうして心くんが謝るの?」

「僕がちゃんと着いていけば、こんなことにはならなかったかもしれないのに……」

「心くんのせいじゃないよ」

「でも……」

「……心くんが一緒でも、今回の事件は防げなかったかもしれないから」

「え……?」


 透花の言葉に、心は漸く顔を上げた。

 彼女は心を責めている様子はなく、いつも通りの穏やかな表情をしている。


「まずはっきりとさせておきたいのは、琉生様を誘いに来た少年の正体かな。湊人くん」

「了解」


 湊人は持っていたパソコンを操り、何かを調べ始めた。

 結果が出ると、画面を皆に見せる。

 そこには、様々な少年少女の顔が映っていた。


「これが、今日の招待状を貰っている子どもたちの全てだよ」

「ありがとう。柊平さん、蒼一朗さん、颯くん、心くん。この中にその少年はいる?」

「いえ……」

「いないっす!」

「いない……」

「確かにいないけどよ。本人は招待状を貰ってなくても、親が貰ってるから着いて来た奴とかかもしれないんじゃねーか?」

「それも考えられるね。湊人くん」

「はいはい。じゃあ、今日の招待客と近しい子どもの全データを出そうか。少し待ってね」


 湊人は、再びパソコンに何かを打ち込んでいく。

 すると今度は、先程よりもかなり多くの子ども達が画面に映し出された。


「うーん、数が多いなぁ……。年齢や性別でもうちょっと絞り込む?」

「ううん。子どもだと性別や年齢はあまりあてにならないからこれで大丈夫だよ。四人とも、しっかり見てくれるかな。この中に、その少年はいる?」


 実際に少年の姿を目撃している四人は、真剣な眼差しで画面を見つめる。

 しかし、やはり答えは否だった。

 見間違いがないように何度目を凝らしても、その少年の姿は画面に映っていない。


「……ここに載っていないということは、その少年は招かれざる客だと考えてほぼ間違いないと思うの。だから今後は、彼を今回のキーパーソンであると考えて話を進めていきます」


 透花の真剣な声に、隊員たちは思わず息を飲んだ――――――――――。

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