忍び込ませたプレゼント
前日に指示された通りの配置に着く。
心、美海、大和はご馳走を堪能し、理玖は食べられるものが少ないので酒を飲んでいた。
そんな四人に付き添いながら、晴久は琉生を見る。
(琉生くん、気付いてくれるでしょうか……)
琉生のテーブルには、一色隊からの贈り物が忍び込ませてあるのだ。
本人には知らせていないため、サプライズというものである。
琉生はテーブルを見渡すと、目を輝かせ一つの品を手に取った。
そして、それをスプーンで口へと運ぶ。
その瞬間、笑顔が広がったのを晴久はしっかりと見届けた。
(食べてもらえました! 大変だったけど、作ってよかったですね)
琉生が食べたのは、オムライスだった。
それは、一色邸に初めて来た時に晴久が振る舞ったものである。
小さな器に綺麗に盛り付けられているため、他の料理と比べても見劣りはしない。
琉生ほどの立場の者なら、欲しい物は簡単に手に入ってしまうだろう。
自分たちにしかできない特別な贈り物をしたいと考え、実行した結果がこれだ。
もちろん、王への許可は取ってある。
だが、さすがに一色邸で作ったものを持ち込むことは断られたため、晴久は王宮の厨房で監視されながらオムライスを作ったのだ。
一国の王子が口にする料理に万が一のことがあってはならない。
そのため、厨房に入ることを許されたのは晴久のみである。
自分に向けられる厳しい視線に耐えながら、彼は見事オムライスを完成させたのだった。
(琉生くん、僕が作ったって気付いてくれたみたいですね。サプライズ大成功です!)
琉生は、すぐにこのオムライスを作ったのが誰だか気付いたようだ。
晴久の姿を探すように、辺りをきょろきょろと見回している。
だが、琉生の位置からは晴久を見つけられなかったようだ。
近くにいる柊平に声をかけ、何やら言っているように見えた。
その姿を確認し温かい気持ちになった晴久は、自分の任務へと戻っていくのだった――――――――――。