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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十八話 スカシユリの本音
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柔らかな女性

「はじめまして。一色透花といいます。これからよろしくね」


 隊長と初めて会った時の衝撃を、私は今でも忘れない。


(この華奢で可憐な少女が、なぜ隊長のような役職に……?)


 主から、若い女性であるということは聞いていた。

 しかし、その姿は私の想像を遥かに越えて若く、そして美しかったのだ。

 思わず言葉を失ってしまったが、彼女は特に気にした様子はなかった。


「柊平さんと呼ばせてもらうけれど、何か不都合があったら言ってね」


 この言葉にも、私は驚かされる。

 彼女は隊長で、私はその部下なのだ。

 まさか、下の名前で呼ばれるとは思っていなかった。

 ……主からは、名前など呼ばれたこともないからな。


「不都合などありませんが……」

「うん。どうしたの?」

「……私は、あなたの部下です。敬称は省略していただいても構いません」

「私が親しみを込めてそう呼びたいのだけれど、ダメかな?」

「……いえ、隊長のお好きなようにお呼びください」

「それならよかった。あと、私はあなたを部下として扱う気はないよ」

「……それは、一体どういう意味でしょう?」


 まさか、既に私がスパイということに感付いているのか……!?

 そのような手練れには、とても見えないのだが……。


「私は隊長で、あなたはその補佐です。名目上はね。でも私にとって、柊平さんは仲間だよ。立場や役職を気にせずに、いい関係を築いていけたらなって思っています」


 ……隊長に会ってからこの短時間で、私は何回驚かされるのだろう。

 人の上に立つ者で、このように柔らかな人物を私は見たことがなかった。

 主の家の方々は、強いがどこか冷たい雰囲気を持つ人ばかりだった。

 ……それが当たり前のことだと思っていたのだが、違うのだろうか?


「だから、敬語を使わずに話してくれても大丈夫だよ。名前で呼んでくれてもいいし」

「……いえ、そこは私なりのけじめがありますので」


 それを、曲げるわけにはいかない。

 私は、隊長と仲良くなるためにここにいるのではない。

 全ては、主の役に立つためなのだ。

 ……私が仕えるのは、この方ではないのだから。


「わかりました。自分の信念を貫くのも大切なことだものね」

「……ご理解いただき、ありがとうございます」

「いえいえ。それでは、改めてよろしくお願いいたします」

「……こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 こうして私の、一色隊の隊員としての生活が始まった――――――――――。

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