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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十八話 スカシユリの本音
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秘めやかなる立場

 私の家は、代々続く軍人の家系だった。

 そして、昔から大臣の家に仕える家でもあった。

 長い歴史の中で繰り返されてきたことなので、父や私の代でそれが変わることもない。

 私も、兄たちと一緒に大臣とその家族に仕えていた。

 ……私の本来の主は、この大臣だ。

 そんな彼が、ある日私を呼び出して言ったのだ。


「お前に、特殊任務を頼もうと思っている」

「……見に余る光栄でございます。その任務というのは……」

「難しいことではない。とある女の監視を行ってほしい」

「……女、ですか?」


 主は、詳しい話を私にしてくださった。

 近々、一人の少女が王から隊長の地位を授かるらしい。

 その少女は最近まで王都にはいなかったこと、隊長という地位を授かるには若過ぎることなど、いくつも不審な点があるらしい。

 だが、王は少女を隊長にすると言って聞かないそうだ。


「だから、王に私から申し上げたのだ。私の優秀な部下を、ぜひその少女の補佐として働かせてほしいとな。そうすれば、何か起こってもすぐに対処ができる。王はこの件を快諾してくださったぞ。その女は、王都に戻ってきたばかりで知り合いなどもいないらしい。私が推薦する優秀な者ならば、必ず女の助けになってくれるだろうと仰っていた」

「……それで、私ですか」

「ああ。頼めるな」

「はい。もちろんでございます。……ですが、一つだけ宜しいでしょうか」

「なんだ。言ってみろ」

「……私には、優秀な兄が何人もおります。彼らを差し置いて、なぜ私が……」

「それは、私がお前を買っているからだよ」

「……私にはもったいないほどの、光栄な言葉でございます」

「本当のことだ。私は信じている。お前ならば、必ずこの任務をやり遂げてくれるとな」

「……久保寺柊平、その特殊任務を承りました。必ずや、成功させてみせます」

「頼んだぞ。月に一度、特に何もなくても私に連絡を入れろ。監視がばれるとまずいので、それ以上の接触はなしだ」

「かしこまりました」


 こうして私は、隊長の下で働くことになったのだ。

 ……本来の主である、大臣のスパイとして。

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