軽いかな? まあ、いーじゃん☆
「隣、座ってもいいかな?」
「うん。どうぞ~」
透花さんは、俺の隣に座った。
それから、お互いに自己紹介をする。
俺たち、名前も知らなかったからね。
「私の名前は一色透花。あなたの名前を聞いてもいいかな?」
「もっちろーん☆ 俺の名前は椎名虹太! 気軽に下の名前で呼んでね♪」
「じゃあ、お言葉に甘えて虹太くんって呼ばせてもらうね」
「うんうん。俺も名前で呼んでもいーい? 透花さんって、とっても綺麗な名前だよね☆」
「ありがとう。虹太くんも、素敵な名前だと思うよ」
……ここで、会話が途切れた。
俺は、内心めちゃくちゃパニックだったよ!
だって、ここで透花さんに会うなんて思わなかったんだもん!
それに、どうしてコンクールに出なかったのか聞かれるのも嫌だった……。
……でも、透花さんの視線は俺が持ってた求人雑誌に注がれてたんだよね。
そして、こう言ったんだ。
「虹太くん、仕事を探しているの?」
俺は、一瞬あっけにとられちゃったよ。
まさか、そんなことを聞かれるなんて思わなかったからさ。
「……うん。俺、こっちの大学に通ってるんだ~。これを機に、今までしたことないバイトでもしてみよっかなーと思って♪」
「そうなんだ。もう、どういうバイトをするか目星はついている?」
「ううん、ぜーんぜん! 俺でもできるバイトがあったらいいんだけどね~」
「虹太くん、住み込みのバイトに興味はない?」
「……住み込み?」
「うん。料理も洗濯も、専属の人がやってくれるよ。自室の部屋の掃除くらいは自分でやってほしいけど、お願いすればそれもやってもらえると思う」
「何それ!? 至れり尽くせりじゃん! その分、仕事がめちゃくちゃキツイとか……?」
「ううん。大学に通いながら趣味の時間もとれるくらい時間に余裕はあるよ」
「すっごい!! ほんとにそんな仕事あるの!? 超興味あるんだけど!!」
俺は、すぐにその話に飛びついた。
だって、家事を全部やってもらえるんだよ!?
そんな夢みたいな仕事があったら、やってみたいじゃん!
いい加減、頻繁にお手伝いさんを呼ぶのも悪いなって思ってたしさ。
俺の反応を見て、透花さんはにっこりと笑う。
「じゃあ、見に来てみない? それで嫌だったら、止めても大丈夫だから」
「透花さんが案内してくれるの? 行く行くー♪」
そのまま一色邸に行って、俺は即入居を決めたんだよね!
詳しい仕事の内容も聞かずに即決したから、透花さん驚いてたよ~。
だって、俺の実家よりも広くて綺麗な屋敷にタダで住めて、給料も貰えるんだよ!?
しかも、ハルくんみたいな優しくて丁寧な人に家事までやってもらえるし!
そんなの、やるしかないじゃん☆
それから、透花さんが軍の隊長で俺はその隊員になるってことを聞いて、今度はこっちがびっくりする番だったんだけどね。
それでも、俺の入居の決意は変わらなかった。
家事をやらなくていいっていうのが、もちろん一番の理由だったけどさ。
ここに住んでる人たちも面白そうな人ばっかりだったから、退屈しなそーじゃん?
一目惚れした透花さんとも、一緒に暮らせちゃうしね☆
……一人暮らしは、やっぱりちょっと寂しかったんだ。
だから、誰かと一緒にいたかった。
自分のことをほとんど知らない人たちとなら、一緒に暮らせるかもって思ったんだよね。
そしてそのまま、今に至るってわけ!