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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十七話 アフリカンマリーゴールドの先にあるもの
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逃げることしかできなかった俺を許して

 それから、俺の生活は一変した。

 ……ピアノを弾けないと、することがないんだよね~。

 暇で暇で仕方なくて、元気のない俺にクラスの人たちが声をかけてくれた。


「虹太、一緒に出かけようぜ!」

「……出かけるって、どこに~?」

「いつもピアノの練習があるからって、全然うちらと遊んでくんなかったじゃん! 怪我してる時くらい付き合ってよ!」

「別にいいけど……」


 俺、お坊ちゃまだけどごく普通の高校に通ってたんだよね。

 見た目が派手だったからか、友達にもチャラ男やギャルが多くてさ。

 みんなに連れられて、初めてカラオケやゲーセンに行ったよ。

 絶対音感があったし、一度聴いた音楽は忘れないからカラオケは得意だった。

 でも、ゲームはぜーんぜんダメ!

 クレーンゲームだけ得意なのは、この時に通って練習したからなんだよね~。

 ……骨折が治っても、この生活は変わらなかったよ。

 もちろん、リハビリには通ってた。

 ……完璧に諦めたら、俺は終わっちゃうって思って。

 でも、ピアノを弾くことはできなかったんだ。

 何回も、ピアノの前には立ったんだよ。

 だけど、もし弾いてみて……。

 前みたいに弾けないって現実を突き付けられたら、俺はどうなるの……?

 きっと、正気ではいられないよ……。

 ……だから俺は、ピアノから逃げたんだ。

 奏太くんと透花さんのおかげでまたピアノと向き合えるまで、鍵盤を触ったことはない。

 ……それでも音楽を捨てられなかった俺は、アコギを弾くようになる。

 別にプロのギタリストになりたいわけじゃない。

 ただ、音楽に触れていたいだけだった。

 それくらいなら、ギターを弾く分にはなんの問題もなかったんだよね。

 あと、俺の怪我は思ってたよりも深刻なものじゃなかったみたい。

 実際ピアノを弾いてみたら指は鈍ってたけど、そこまで怪我の影響は感じなかったもん。

 これならもっと早く弾いてみればよかったなぁとか、何年間もムダにしたなぁとか、考えないこともなかったよ。

 でも、俺にとってピアノから離れた数年間は必要だったんだと思う。

 そのおかげで俺を支えてくれる人たちのありがたみと、プロになることが全てじゃないって気付けたしね。

 今は、ピアノを弾けるだけでほんとに楽しいんだ!

 俺は、俺なりに音楽と向き合っていこうって思えるようになったんだよ☆

 だけど、それはあくまでも”今”の話なんだよね~。

 ……高校生の頃はそんな風に考えられなくてさ。

 俺に新しい楽しみを教えてくれた友達や、怪我をしてからはより愛情を注いでくれた両親や家の者たちは、ピアノが弾けた頃の俺を知ってる。

 それが、だんだん息苦しくなってきちゃって……。

 俺は王都の大学を受験して、高校卒業を機に家を出ることにしたんだ。

 そこで運命の再会が待ってるなんて、思いもよらなかったよ――――――――――。

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