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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十七話 アフリカンマリーゴールドの先にあるもの
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世界の色は、あっという間に元に戻ってしまった。

「ん……」

「虹太…! 気が付いたのね!?」

「先生! 息子が、息子が目を覚ましました……!」


 目を覚ました俺の視界に飛び込んできたのは、両親と白い天井だった。

 二人に聞くと、係の人が倒れてる俺を見つけてくれて、そのまま病院に運ばれたらしい。

 幸い、命に別状があるような大怪我はしなかったんだけど……。


「手が、痛いよ……」

「………………………………」

「………………………………」


 二人とも、どうして俺の方を見ないの?

 ……どうして、そんなに悲しい顔で黙ってるの?


「……手の状態については、私から話しましょう。こんにちは、虹太くん」

「こんにちは……」


 白衣を着て眼鏡をかけた人が、俺に話しかける。

 俺を診てくれたお医者さん、だよね……。


「……君の手なんだけどね、残念ながら手首と指が折れてしまったんだ」

「え……?」

「……君は、ピアニストの卵だそうだね」

「……はい。先生、俺の手、ちゃんと治るよね?」

「………………………………」

「今までみたいに、ピアノを弾けるようになるよね……!?」

「……隠してもしょうがない。正直に言おう。その夢は、諦めた方がいい」

「………………………………!!」

「もちろん、日常生活には戻れるようになるよ。きちんとリハビリをすれば、ピアノを弾くことはできるようになるだろう。だけど、プロのピアニストになるには……」


 先生は何か言ってたけど、もう俺の耳には入ってこなかった。

 ……ピアノは、俺の全てだったのに。

 それがなくなったら、どうすればいいの……?

 ピアノに出逢って、俺の世界はたくさんの音楽で彩られたんだ。

 白黒の世界で生きる俺にとって、ピアノだけが唯一、世界を綺麗に見せてくれるもの……。

 それをなくした瞬間、俺の世界は一気にセピア色に戻っていくのを感じた――――――――――。

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