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……そう思ってたのは、俺だけだったんだね。
「それで、相談って何~? 俺でよかったらなんでも聞くよ!」
「ありがとう。実はね……」
俺たちは、階段の踊り場に来ていた。
志摩くんはそう言ったきり、続きを話さない。
おかしいと思った俺は、彼の方を振り向こうとする。
「どうし……!」
……その瞬間、彼の手が俺の背中を押したんだ。
まさかこんなことをされるなんて思わなかった俺の体は、簡単に宙に舞った。
(指を、指を守らなきゃ……!)
……だけど、とっさにそんなことできないんだよね。
俺の体は、嫌な音と一緒に床に叩き付けられた。
……手と、頭を打った気がする。
「君が悪いんだ……! 君がいたら、僕は一生一番になれない……!」
朦朧とする意識の中、志摩くんの言葉を聞いた。
彼はそのまま、この場を立ち去ってしまった。
俺にとって彼は、ライバルだったんだけどなぁ……。
まさか、絶対に勝てない相手って思われてるなんて……。
(手が、痛い……。誰か、助け……)
俺はそのまま、意識を手放した――――――――――。