憂鬱な時間
「………………………………」
「心、お前、さすがに一気に掻っ攫っていきすぎだろ……」
「蒼一朗さん、いいですよ。まだまだたくさんありますから」
「……ほら、ちゃんと野菜も食べるんだぞ」
「しゅうにい! わかってるよ! みうもやまとくんもいい子だもん! ねー!」
「………………………………♪」
「うまっ! なんだこのタレ! めちゃくちゃうまいっすよ!」
「晴久くん特製だからね。芸が細かいよねぇ。焼きおにぎりやピザまであるよ」
「理玖、大丈夫? 食べられるものある?」
「……野菜を中心に食べてるから、大丈夫だよ」
俺たちは今、バーベキューをしてるよ~。
みんなは楽しく食べてるけど、俺はバーベキューって苦手なんだよね……。
「虹太くん、全然食べてないみたいですけど……」
「……平気だよ♪ じゃあ、この肉を貰っちゃおうかな~」
晴久くんが、俺に声をかけてくれる。
こういう行事好きそうなのに、こんなに静かにしてたら心配にもなるよね~。
「あっ、そのお肉は……!」
「……って、にがっ! 何これ!? ほぼ炭じゃん!!」
「おい、食う前にちゃんと見ろよな。どう見ても焼き過ぎてたやつだったろ」
蒼一朗さんに言われて、俺は初めてそれが焼き過ぎてたものだって気付くんだ。
……場の雰囲気を壊さないために、なんとか誤魔化さないと。
「……そんなのわかってるよ~。ちょっと、みんなを驚かせようと思ってさ! 驚いた~?」
「お前、あんま変なことするなよ。大和や美海が真似したら大変だろ」
「ごめーん。でも、二人とも賢いから大丈夫だと思うよん☆」
……ほんとは、わざとじゃないんだよ。
だって俺は、色がわからないんだから――――――――――。