解放
「協力しても、いいって……」
「わあ! それはよかった!」
「でも、交換条件があるって……」
「それはどんなものなの?」
「……正確にはね、みんなは鉱物を探すことができるわけじゃないんだ。その周りの土が、とっても美味しいらしくて……」
「そうだったんだ」
「美味しい土を探してると、自然と鉱物に辿り着くんだって……。だから、その土を食べさせてくれるならいくらでも協力するって言ってるよ……」
「なるほど。二階堂さん、それで大丈夫ですか?」
「は、はあ……」
「では、それでお願いしましょう。スフェーラマセさんたち、よろしくお願いします」
「協力してくれて、ありがとう……」
……獰猛と噂されるスフェーラマセを、心と呼ばれる少年は簡単に手懐けちゃったんだ。
最初は僕たちに襲い掛かろうとしたのに、彼が話すとそれをピタリと止めてさ……。
少年の手にすり寄っている動物の姿を、僕はいまだに信じられないよ……。
僕たちは、二匹のスフェーラマセと一緒に採掘場へと戻った。
彼らは、次々に高級そうな鉱物を探し当てていくんだ。
労働者たちは、獣の姿に脅えながらも興味深そうにその様子を眺めてたよ。
……僕も、動物は苦手だから遠目で見物させてもらったけどね。
「これくらいあれば、この鉱山をあなた方から買うことはできますか?」
「そそそそそそれはもう、充分な量でございます!」
「では、これはあなた方に差し上げます。二度と、ここに足を踏み入れないでください」
「……はい! では、私どもはこれで……」
「約束を破ったら、あなた方の未来の保障はしかねますので」
「……承知いたしましたーっ!!」
透花さんは蒼一朗さんが捕まえた責任者と部下たちに、笑顔でその鉱物を差し出した。
それを受け取ると、奴らは一目散に逃げていく。
……人の笑顔に恐怖を覚えたのは、これが初めての経験だったよ。
すぐにさっきまでの柔らかい笑顔に戻ると、僕たち労働者に向けて話し始めた。
「今日からここは軍の管理下に置かれます。これまでとは違い、格段に労働環境はよくなるでしょう。ですが、以前のように一攫千金は望めません。働いた分だけ、給料をお出しする形になると思います。それを踏まえて、ここで働き続けたい方はいらっしゃいますか?」
透花さんの問いに、手を上げる人がちらほらいた。
……みんな、借金に苦しんでる人たちだ。
ここ以外に行く場所もないって言ってる人が多かったな……。
「では、手を上げた方はこちらへどうぞ。引き継ぎの者が来るまで、私が残ります。それ以外の方は部下が近くの町まで送りますので、この二人の後に着いていってください」
労働者たちが、移動を始める。
……僕はもちろん、手を上げなかったよ。
待ってる家族なんていないけど、あの家に帰りたいからね。
一攫千金なんて夢見たのが馬鹿だったんだ。
大学に通いながら、地道に借金を返す方法を探そう。
そう思いながら、歩き出そうとすると……。
「あ、二階堂さん。あなたはここに残っていただいても構いませんか?」
僕を、呼び止める声が聞こえたんだ――――――――――。