告発の結果
透花さんは、僕の話を最初から最後まで真剣に聞いてくれた。
……後ろで鉱山の責任者が青ざめてたけど、そんなのもう僕には関係ないよ。
「……なるほど。二階堂くん、話してくれてありがとうございます」
「……いえ」
「彼の話は本当ですか?」
「あ、そそそそそのですね……! 本当といいますか、嘘といいますか……」
「……はっきり仰らないようなら、他の労働者の方に話を聞くまでですが」
「くっ……!」
責任者は、言い訳が通じないと悟ったのかその場を逃げ出した。
……柔らかな女性なのに、どうしてか逆らえない雰囲気があるんだよね。
「蒼一朗さん、捕まえておいて」
「へいへい」
「その後に、労働者さんたちに伝えてほしいの。今までの辛い生活は今日で終わりだって」
「りょーかい」
透花さんの言葉に、ガッチリした体型の男が駆け出す。
あの速さなら、あっという間に捕まえられるだろうね。
「彼のことは任せてください」
「……ありがとうございます」
「さて、では行きましょうか」
「行くとは、一体どちらに……?」
「スフェーラマセに会いにですよ。あなたの提案は、大変興味深いものでしたからね」
そう言ってにっこりと笑う透花さんのことを、僕は正直頭がおかしいと思ったね。
「一色隊長、お言葉ですが……」
「はい。なんでしょうか?」
「スフェーラマセは獰猛な動物です。私は先程彼らを利用できればという話をしましたが、そう簡単にはいかないと思います。もっと具体的な案を練って……」
「大丈夫ですよ」
「は、はあ……」
あまりにもきっぱりと言うから、僕はもう相槌を打つしかなかったよ。
「私たちは、彼らを利用するのではありません。協力してもらうのです」
「利用ではなく、協力ですか……?」
「はい。心くん、お願いできるかな?」
「……ん」
この時、透花さんの隣に控えていた少年が初めて声を発した。
……こんな子どもに、何ができるっていうのさ?
「さあ、心くん、二階堂さん。行きましょう!」
「……おー」
「……はい」
……正直、着いていきたくはなかったよ。
でも、言い出したのは僕だから見届ける責任があるし……。
僕は渋々、透花さんと少年と一緒にスフェーラマセが住む森へと向かったんだ――――――――――。