最底辺の日々
「おらぁ! 休まずに手を動かせ!」
「ちんたらやってんじゃねーぞ! しっかり働け!」
……その鉱山は、劣悪という言葉がぴったりの場所だった。
口車に乗せられやって来た労働者は、朝から晩まで休むことなく働かされる。
食事も、提供がある日とない日がまちまちだった。
出されても、パン一個だけが多かったし……。
一日の労働が終わると、その辺に雑魚寝させられる。
ゆっくり休めるはずがないから、次の日に疲れが残って作業効率も上がらない。
……そのまま弱って亡くなっていく人を、何人も見たよ。
こんな場所、逃げ出せばいいじゃないかって思うでしょ?
ところが、そうもいかないんだ。
そこは、人里から離れた場所にあるからね。
荷物を取り上げられた労働者たちが、勘だけで町まで辿り着くことはできないんだよ。
鉱山の外には、獰猛な動物たちがうろついてるって噂もあったし……。
僕は必死に働きながらも、考えることだけは止めなかった。
……考えることを止めちゃったら、僕という人間が終わってしまう気がしたからね。
(どうにか、もっと効率を上げることはできないかな……)
僕は、あることを思い出した。
確かこの辺をうろついてる動物は、スフェーラマセという名前だったはずだ。
この動物は特殊な鉱物に群がる習性があるって、昔本で読んだことがある。
獰猛だから、研究が全然進んでいないとも……。
どうにか手懐けることができれば、効率が格段に上がるんじゃないの?
そうすれば僕も、ここから抜け出せるかもしれない……!
僕は早速、このことを上の人たちに打ち明けようとした。
……でも、止めたよ。
僕らは、まるで奴隷も同然の扱いを受けてるんだ。
そんなことをしてる奴らが、僕の言葉に耳を傾けてくれるわけがない。
下手をすれば、要注意人物として目をつけられてしまうかも……。
……だから僕は、待ったんだ。
チャンスが来るのをね――――――――――。