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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十六話 いつも心にユウガオを
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甘い言葉に乗せられて

 両親が僕に残した借金の額は、とてつもないものだった。

 ……それこそ、一生働いても返せないくらいにね。

 金貸しは、すぐに大学を辞めて働くように僕に迫った。

 返すのが遅れるほど利子が増えていくから、それは当たり前のことなんだけど……。

 ……僕は、どうしても大学を辞めたくなかった。

 あれだけ必死に勉強して、明るい未来が徐々に見えてきたと思ってたのに……。

 ……仕方なく休学届けを出し、僕は期限付きで大学を休んで働くことにしたよ。

 だけど、普通に働いても返せるような額じゃない。

 そんな僕に、金貸しは甘い言葉を囁く。


「一攫千金を狙える場所を知ってるぜ」

「……言っておくけど、ギャンブルはやりませんよ」

「そんなんじゃねぇよ! 少し離れた場所にある、鉱山を知ってるか?」

「はい。確か、砂金やら宝石が埋まってるっていう……!」

「それだよ。高価な値で取引されるような物も採掘できるって話だぜ。あんたも、いい宝石をいくつか見つければ、晴れて借金とはオサラバできると思うんだがなぁ」


 ……この時の僕は、冷静な判断ができるような状況じゃなかったんだよね。

 今までの日常が、全部非日常に変わっていくんだもの。

 両親は借金を残して死ぬし、学びの場は奪われるしさ……。

 ……だから、気付かなかったんだよ。

 金貸しが、下卑た笑みを浮かべていたことにね。

 それに、僕の中にずるい気持ちもあったんだと思う。

 働いても返せない額なら、一攫千金に縋るしかない。

 宝石を見つけるだけでいいんだから、働くより簡単じゃないかって……。


「……その話、詳しく聞かせてもらえますか?」

「勿論だ! 俺は、鉱山と労働者の仲介役もやってるからな! ちょちょいっと口を効けば、すぐにでも働き始められるぜ!」


 ……こうして僕は、まんまと口車に乗ってしまった。

 それが、地獄の日々の始まりだとも知らずにね――――――――――。

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