一色隊のクールなまとめ役、久保寺柊平
「……どうやら、無事に終了したようだな」
「柊平さん。いらしてたんですね」
「ああ。隊長と一緒に、他の隊の方々に混じって見学していたんだ」
「それなら、心くんや虹太くんの勇姿はご覧になりましたか? すごかったんですよ」
「騎馬能力テストの終わりの頃に来たので、結城の方は見ていない。だが、椎名は見た。……私は正直、お前のことを見直したぞ」
「うっそー! 柊平さんに褒められた!? 毎日あんなに怒られてばっかりなのに……」
「それはお前が、必要最低限の生活スキルを身に付けていないからだろう……」
試験を終えた皆の元に、途中から見学していた柊平がやって来た。
晴久、虹太と和やかに談笑する彼に、湊人が声をかける。
「あれ? それなら透花さんはどうしたの?」
「……皆の成績があまりにも優秀だったので、他の隊からのスカウト殺到している。既に一色隊に所属している故、直接隊員たちと交渉するのではなく上官の隊長に掛け合っているのだろう。暫く時間がかかりそうなので、私だけ先に皆の元へ行くように言われたんだ」
「なるほど、そういうことか。納得だよ」
柊平の言葉を聞き、心がぽつりと呟いた。
「……僕、別の隊に行くのは嫌だ」
「俺もっすよ! 透花さんが隊長だから、よくわかんねー軍人になったっていうのに…!」
心の後に、颯も続く。
年少組が不安そうにしているのを見た柊平は、彼らの肩を優しく叩いた。
「安心しろ。全てのスカウトを丁重に断っているからこそ、時間がかかるんだ。隊長はお前たちのことも、勿論他の皆のことも手放す気などない」
これを聞き安心したのは、心と颯の二人だけではない。
いつの間にか全員の間に走っていた緊張の糸が切れるのを感じる。
皆、隊を離れたくないという気持ちは同じなのだ。
「……さっきから一色隊と話してるのって、久保寺家の奴だよな」
「久保寺家? なんだそれ」
「はぁ!? お前知らないのかよ! 久保寺家といえば、軍人の名門でも一、二を争うエリート一家だぜ!?」
「マジで!? あそこの隊ってそんな奴までいるのかよ!?」
「一色隊、恐るべし……」
周囲がこのような会話をしていることなど、当の本人たちは全く気付いていないのであった。