意外な特技
僕たちは今、とあるバーベキュー施設に来てるよ。
ここは、少し変わってるらしくてね。
食材の持ち込みは自由だけど、近くにある畑や川からとってもいいそうだ。
せっかくだから、肉や主食だけ用意して残りは現地調達ってことになったんだけど……。
「あれ? 全然火が点かないよー」
「おかしいっすね! この炭、全然燃えないっすよ!」
「困ったな。どうしたものか……」
……明らかに、この班は人選ミスだと思うんだよねぇ。
魚は、蒼一朗さんと大和くん、そして透花さんが川に釣りに行った。
畑には、晴久くんに春原さん、心くんと美海ちゃんにぱかおが行ったんだけど……。
まずここ、人数多すぎだと思わない?
野菜を持ってくるだけでこの大人数って……。
晴久くんも春原さんも非力だから仕方ないとは思うけどさぁ。
そして火起こしを任されたのが、虹太くんと颯くん、久保寺さんに僕の四人というわけだ。
虹太くんと颯くんには、正直期待してなかったよ。
でも、まさか久保寺さんまで出来ないとは思わないでしょ……!
いつも、なんでも完璧にこなしてるのにさ……。
「……炭に直接火を点けるのは難しいですよ」
その様子を見かねた僕は、嫌だったけど口を出すことにした。
火が点いてなくて、戻ってきた透花さんにガッカリされる方が嫌だからね。
「確か、着火剤があったはずです。久保寺さん、取ってもらえますか?」
「あ、あぁ……。これか?」
「そうです。あと、この炭の組み方はよくないですよ。空気の通り道がないですもん」
「へー! たくさん使えばいいってもんじゃないんすね!」
「湊人くんすっごーい☆ 超物知りじゃーん!」
「……はぁ。どうもありがとう。勝手に組み直させてもらうよ」
僕は炭を組み直すと、久保寺さんから受け取った着火剤に火を点ける。
しばらくすると、着火剤から炭に火が移り始めた。
「団扇で扇ぎながら、時々炭を足してください。灰色になったら完成です」
「あっ、扇ぐのなら俺にもできるよ~☆」
「俺もっす! 虹太さん、やりましょう!」
ここまでやれば、不器用と無知な二人でも大丈夫でしょ……。
その場を離れようとしたけど、柊平さんが僕を見ていたので足を止める。
「なんですか?」
「……いや、すごいと思ってな」
「ふふっ。お褒めいただき、ありがとうございます」
「……二階堂は、こういうアナログなものは苦手だと勝手に思っていた」
「……まあ、好きではないですよ。でも僕、こう見えて意外と逞しいんです」
得意の営業スマイルを浮かべると、さっきまでの場所に戻った。
久保寺さんは何か言いたそうだったけど、それに付き合うほど僕は優しくないよ。
それに、この流れは断ち切っておきたかったし。
……聞かれたところで答えないけど、過去について詮索されるのは嫌だからね。