はじめまして、こんにちは。
「せのたかいおにいちゃん、すごいね! おかあさんのこと、あんなにかるくもちあげて!」
「……そうか」
「きんぱつのおにいちゃんも! おいしゃさんみたいだった!」
「……みたいじゃなくて、僕は医者だから」
花を摘んで帰るまでの間、美海のおしゃべりは止まらなかった。
……僕たちの家に誰かが来ることなんてなかったから。
美海にとっては、お客さんが来たって感じだったんだと思う。
それに比べて、僕は気持ちが重かった。
命は助かったけど、これからどうなるんだろう……。
自分が死んで、お母さんと美海は幸せに暮らせるようになると思ってたのに……。
こんなことを考えていると、あっという間に家に着いていた。
透花さんは、さっきと同じように椅子に座ってる。
「理玖、お目当てのものはあった?」
「ああ。僕は早速、薬を作るから」
「みうもおてつだいする!」
「柊平さんは、家の前で待機してもらってもいい? 村の人に動きがあったら教えて」
「かしこまりました」
理玖さんと美海は寝室に、柊平さんは庭に行ってしまった。
……部屋には、僕と透花さんだけが残される。
美海、初めて会った人なのになんであんなになついてるんだろ……?
「少し、いいかな?」
「……うん」
急に、透花さんが話しかけてきた。
……どこまでも優しく、澄んだ声だ。
「自己紹介もまだしていなかったと思ってね。私は一色透花。王都で軍人をしている者です。金髪で髪の長い方が春原理玖、もう一人の背が高い方が久保寺柊平。二人とも私の部下だよ。差し支えなければ、あなたの名前を聞いてもいい?」
「……結城心」
「心くんか。素敵な名前だね」
「………………………………」
他人から褒められることなんてなかったから、なんて言ったらいいかわからないよ……。
急に黙ってしまった僕に気を悪くした様子もなく、透花さんは会話を続ける。
「心くん、ここから先は嫌だったら話してくれなくても構わないのだけれど……」
「……なに?」
「……さっきは、どうしてあんなことになっていたのか教えてもらえる?」
さっきっていうのは、木に括られて火あぶりにされそうになってたことだよね……。
「別にいい、けど……」
「うん。どうしたの?」
「僕、しゃべるの苦手だから……。うまく説明できないと思う……」
「大丈夫だよ」
「ハキハキできないから、時間もかかるよ……」
「それも大丈夫。話してくれるだけでありがたいよ。ゆっくり、心くんの言葉で聞かせて」
「わかった……」
透花さんの笑顔に促されて、僕はお父さんのことや、今まで僕たち家族が受けてきた扱いについて話し始めたんだ――――――――――。