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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十五話 チューリップを隠さないで
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はじめまして、こんにちは。

「せのたかいおにいちゃん、すごいね! おかあさんのこと、あんなにかるくもちあげて!」

「……そうか」

「きんぱつのおにいちゃんも! おいしゃさんみたいだった!」

「……みたいじゃなくて、僕は医者だから」


 花を摘んで帰るまでの間、美海のおしゃべりは止まらなかった。

 ……僕たちの家に誰かが来ることなんてなかったから。

 美海にとっては、お客さんが来たって感じだったんだと思う。

 それに比べて、僕は気持ちが重かった。

 命は助かったけど、これからどうなるんだろう……。

 自分が死んで、お母さんと美海は幸せに暮らせるようになると思ってたのに……。

 こんなことを考えていると、あっという間に家に着いていた。

 透花さんは、さっきと同じように椅子に座ってる。


「理玖、お目当てのものはあった?」

「ああ。僕は早速、薬を作るから」

「みうもおてつだいする!」

「柊平さんは、家の前で待機してもらってもいい? 村の人に動きがあったら教えて」

「かしこまりました」


 理玖さんと美海は寝室に、柊平さんは庭に行ってしまった。

 ……部屋には、僕と透花さんだけが残される。

 美海、初めて会った人なのになんであんなになついてるんだろ……?


「少し、いいかな?」

「……うん」


 急に、透花さんが話しかけてきた。

 ……どこまでも優しく、澄んだ声だ。


「自己紹介もまだしていなかったと思ってね。私は一色透花。王都で軍人をしている者です。金髪で髪の長い方が春原理玖、もう一人の背が高い方が久保寺柊平。二人とも私の部下だよ。差し支えなければ、あなたの名前を聞いてもいい?」

「……結城心」

「心くんか。素敵な名前だね」

「………………………………」


 他人から褒められることなんてなかったから、なんて言ったらいいかわからないよ……。

 急に黙ってしまった僕に気を悪くした様子もなく、透花さんは会話を続ける。


「心くん、ここから先は嫌だったら話してくれなくても構わないのだけれど……」

「……なに?」

「……さっきは、どうしてあんなことになっていたのか教えてもらえる?」


 さっきっていうのは、木に括られて火あぶりにされそうになってたことだよね……。


「別にいい、けど……」

「うん。どうしたの?」

「僕、しゃべるの苦手だから……。うまく説明できないと思う……」

「大丈夫だよ」

「ハキハキできないから、時間もかかるよ……」

「それも大丈夫。話してくれるだけでありがたいよ。ゆっくり、心くんの言葉で聞かせて」

「わかった……」


 透花さんの笑顔に促されて、僕はお父さんのことや、今まで僕たち家族が受けてきた扱いについて話し始めたんだ――――――――――。

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