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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十五話 チューリップを隠さないで
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自然と人間

 その人は、僕と火を点けようとした人の間に立っていた。

 だから、僕からは背中しか見えない。


「な、なんだお前は!?」

「見たことない顔ということは、余所者だな!?」

「邪魔をするな! これは、村を守るための生贄なんだ!」


 村の人たちが、一斉に彼女を責め立てる。

 だけど、彼女がそれを気にする様子はなかった。


「……柊平さん、この子のこと、下ろしてあげて」

「……かしこまりました」


 彼女が指示すると、一人の男の人が僕に近付いてくる。

 そして、縄を解くと地面に下ろしてくれた。


「勝手なことをするな!」

「儀式を邪魔されたから、神がお怒りだぞ!」

「今すぐ、その子どもを元に戻せ!」

「山を見てみろ! 今にも噴火しそうじゃないか!」


 みんなの怒りの矛先が、彼女に向く。

 彼女の背中は、静かに怒っているように見えた。


「……なんとなく、事情はわかりました。でも私には、彼への酷い扱いに対して山が怒っているように感じます」

「何を言ってるんだ!?」

「いいから早く、そいつを木に括り付けろ……!」

「山よ! 私は、この子に危害を加えないと誓います。ですからひとまず、その怒りを鎮めていただけませんか? 約束を破れば、どのような罰でも受けましょう」


 女の人は、村の人たちの声なんか聞こえないみたいに、大声でそう言った。

 そしたら……。


「お、おい! 急に山が静かになったぞ!?」

「どういうことだ!? 生贄を捧げてないのに……!」


 ……今にも噴火しそうだった山から、急に熱が引いていくのがわかったんだ。

 村の人たちは、呆然としてる。

 僕も、その光景をぼーっと見てるしかできなかった。

 ここで、初めて彼女が僕の方を見た。

 その人は、僕の想像よりもとても若くて……。


(綺麗な、人……)


 これが、僕と透花さんの出逢いだった――――――――――。

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