幸せだった日々
僕は、小さな村で生まれた。
そこはとても閉鎖的で、新しいもの、余所者などは受け入れられないような場所だった。
そんな村で、僕はお母さんと、お父さんと一緒に暮らしてた。
……お父さんは、村の外から来た人だったらしい。
他のみんなとは違う浅黒い肌、そして真っ赤な瞳をしていた。
……僕と、そっくりだったと思う。
村の人たちは、僕たち家族に辛く当たった。
「あんな赤い目の人間なんて見たこともない! 気味が悪い!」
「人間ではなく、あの男は化け物なんじゃないか?」
「では、息子は化け物の子だな! 片目とはいえ、父親によく似た色をしている」
「不気味だ……。あの家族は、いつかこの村に災いをもたらすんじゃないか?」
でも、平気だった。
お父さんはとても強い人で、いつでも僕とお母さんを守ってくれたから。
僕の目は、片方だけお父さんに似て赤だった。
……他の人は色々言うけど、僕にとってこの色は誇りだった。
強くて優しい、大好きなお父さんと同じなんだから。
他の場所で暮らすことは、家族全員考えもしなかったと思う。
お母さんと僕は村以外のことは知らなかったから、ここが閉鎖的だと気付かなかった。
他の場所に行っても、どうせ同じ扱いを受けるって思い込んでて……。
お父さんは、自分の故郷について話したことは一度もなかったはずだ。
だから僕たち家族は、酷い目に遭ってもこの村で暮らしていくしかない。
でも、家族が揃っていれば大丈夫。
そんな風に、思ってた。
あの日が、来るまでは――――――――――。