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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十四話 月下美人みたいな君
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儚いモノは美しい

 花火が始まる時刻には、全員が理玖と颯が守っていた場所へと集っていた。


「はい、ご希望の焼きそばだよ。足りないと困るから、一応お好み焼きも買ってきたけど」

「あざまっす! ボリュームたっぷりっすね!」

「りっくんにはこれ~! いちごあめと、きゅうりの一本漬けだよん☆」

「……どうも」


「ハル、結局食い切れなかったな」

「ふがいないです……」

「……ちょうだい。溶けてるのも甘くて好き……」


(シュウヘイ! はやくわたあめくれよ! オレ、もう我慢できないぞ!)

「……今開けてやる。だから、暴れずに待て」


「大和くんと美海ちゃんにお土産だよ」

「わぁ! ぬいぐるみだ! とうかねえ、ありがとう!」

「………………………………♪」


 このような会話を交わしている内に、あっという間に開始時刻になった。

 夜空に、色とりどりの華が咲き始める。


「う~ん、この音を聞くと、花火って感じがするよね~」

(な、なんだこの音! この間のはなびと全然違うぞ! おっきい!)

「この間のは手持ち花火だったけど、今日のは打ち上げ花火だから……」

「わっ! すごい! ハートだ! あっ、次はにこちゃんマーク!」

「こんなにたくさん種類があるんだな! おっ! 次は雪だるまだぜ! 夏なのに!」

「………………………………!!」

「大和、あれが気に入ったのか? 二階堂、あれはなんて花火だ?」

「土星ですよ。確かに、少年は心惹かれるデザインかもしれませんね」

「とても綺麗ですね。僕、ちゃんと打ち上げ花火を見たのは始めてかもしれません」

「……私もそうだ。美しいな」


 皆が盛り上がっている中、愁いを帯びた表情で静かに夜空を見上げる者がいた。

 透花である。

 そんな彼女に気付いた理玖が、声をかける。


「……なんて顔してるの」

「……私、そんなに変な表情をしていた?」

「……自覚がないなら、気を付けた方がいいよ。君の笑顔が好きな子どもたちなんかは特に、今みたいな顔を見たら驚くと思うから」

「……はーい、わかりました」

「……それで、何を考えてたの」

「え……?」

「……どうせ、くだらないことでも考えてたんだろう」

「……花火って、すぐに消えてしまうでしょう? 美しいけれど、儚いなぁって……」

「……僕は、逆だと思うけど」

「どういうこと?」

「……儚いから、美しいんだよ。あれが常に夜空に浮いてたら、ちっとも綺麗じゃない」

「……そうか。そうだよね」


 透花は、いつの間にか笑顔になっていた。


「ありがとう、理玖。なんだか元気が出てきたよ」

「……そう。よかったね」

「うん。未来がどうであれ、今を一生懸命生きようって思えたから」

「それってどういう……」


 理玖の言葉を遮るように、透花は立ち上がった。

 そして、皆の会話の輪に入っていってしまう。


(……君は、本当にいつも勝手だ)


 理玖はため息を一つ吐くと、再び夜空を見上げた。

 そこには、先程までと変わらず次々に華が咲いては散っている。

 一色隊の夏休みも、あっという間に残り半分を切っていた。

 彼らは他に、どのような思い出を作るのだろうか――――――――――。

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