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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十四話 月下美人みたいな君
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大きな甘えん坊たち

④エンジョイ班3の場合


「いや~、透花さんとお祭りを楽しめるなんて嬉しいな☆」

「確かに役得だよね。僕たちは幸運だよ」

「あの、そう言ってもらえるのは嬉しいのだけれど……。この体勢は?」


 ここは、虹太、湊人、そして透花の班である。

 透花は、二人に両腕をがっちりと組まされていた。


「だって透花さん、ちょっと目を離しただけですぐ声かけられるじゃーん!」

「そうだよ。ここまでしても、さっきから君のことを見る人が絶えないんだからね」

「……そこまで言ってもらえるなら、大人しくエスコートされることにするよ」

「まっかせといてー! じゃあ、まずはどうしよっか?」

「くじ引きの店に行って、本当に一等のくじが入ってるのか確かめるのはどう?」

「あはは。湊人くんらしいなぁ」

「湊人くんらしいけど、今日はきゃっかー! そういうのは、一人で来た時にやってよ!」

「はいはい。わかってるよ。じゃあベタに、射的でもやりに行く?」


 三人は、まずは射的の屋台に行くことにした。

 だが、虹太は音楽以外のことに対しては不器用である。

 湊人も、デジタルの世界ではともかくアナログなものは得意ではない。

 結果として、二人の弾が景品に当たることはなかった。

 かすってもいないというのが、より悲壮感を漂わせる。


「こういうのは、楽しむのが大切だからいいんだよ~」

「……僕は、できれば結果も手に入れたかったけどなぁ」

「二人とも、不器用さんだねぇ。どれどれ、透花さんの腕前を見せてあげましょう」


 透花はそう言うと、次々に景品を撃ち落としていく。

 大和や美海が喜びそうなおもちゃに狙いを定めているあたり、なんとも彼女らしい。


「わー! 透花さん、すっごーい♪」

「これはこれは、結構なお手前で」

「お褒めに預かり光栄です」

「あっ、俺が景品持つよ~」

「いいの? じゃあ、お願いしようかな」


 こうして三人は、いくつかの景品を得ることに成功したのだった。

 その後も様々な屋台を回っていくうちに、花火を見るための集合時間が近付いてきた。


「そろそろ、理玖と颯くんの分の食べ物を買って戻ろうか」

「颯くんには、焼きそばを買ってきてほしいって頼まれてるよ」

「りっくんはどうしよー。食べれるものあるかな?」

「お腹にはたまらないけど、りんごあめがいいと思うよ。いちごあめがあったらそっちの方がいいけれど」

「元々そんなに食べない人だから、それで充分かもね」

「じゃあその二つと、他にもいくつか買って戻ろ~」


 食べ物の屋台を重点的に見ていると、虹太がニヤリと笑った。

 そして、一つの出店を指差す。


「俺、たこ焼きが食べたいな~☆」

「……君が、自分から何かを食べたいっていうの珍しいね。あんまり食に興味ないのに」

「いいよ。じゃあ、買おうか」


 透花がたこ焼きを買うと、虹太は笑みを濃くする。


「集合時間まで待ったら、アツアツじゃなくなっちゃうよー! 今すぐ食べたいな☆」

「ふふっ。本当に珍しいね。どうぞ」

「両手が塞がってて食べれないから、透花さん食べさせて♪」

「……虹太くん、最初からこれを狙ってたでしょ」

「え~? なんのこと?」


 そう、虹太はこれを狙っていたのだ。

 透花の荷物を持つと言い出したのも、全てはこのためだったのである。


「仕方ないなぁ。はい、口開けて。あーん」

「あーん☆ ……うん、すっごくおいしいよー! 透花さん、ありがと~」

「どういたしまして」

「透花さん、僕も」

「もうっ、湊人くんは自分で食べられるでしょう?」

「実は僕、自分でたこ焼きを食べると死んじゃう病気にかかってるんだ」

「……今日は二人とも甘えん坊さんだね。はい、あーん」

「あーん。 ……うん、透花さんに食べさせてもらうたこ焼きは格別だね」

「あー! 湊人くんずるーい! 透花さん、俺ももう一回食べたい!」


 こうして二人は、たこ焼きがなくなるまで交互に食べさせてもらった。

 そのせいで自分は一つも食べられなかったことに、透花は少し落ち込んでいたらしい。

 その後は、いくつかの屋台で食べ物を買うと理玖と颯が待つ集合場所へと戻った。

 二人は、まだ知らない。

 規模の大きく有名なお祭りだったため、大学の友人たちがその場に居合わせたことに。

 夏休み明けに、見知らぬ美女を巡って三角関係であると噂されることに――――――――――。

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