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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十四話 月下美人みたいな君
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きょうだいのあり方

③エンジョイ班2の場合


 所変わって、こちらは柊平、心、美海、そしてぱかおの三人と一匹の班である。

 放っておけない心とぱかおがいるため、柊平が同行している。

 ちなみにぱかおは、服を着た状態で柊平の鞄に入れられていた。

 そこから顔だけを出し、祭りを楽しんでいるようだ。


「いか焼き……。たこ焼き……」

「もー! しんにい、さっきから食べ物ばっかり! みうは金魚すくいとか、ヨーヨーつりとかやりたいの!」

「ヨーヨーはいいけど、金魚はだめ……」

「なんで!?」

「声、聞こえるから……。やりにくい……」

「あ、そうだよね……」


(おい! あの白いモコモコはなんだ!? ちょっとオレの毛に似てるぞ!)

「こら、あまり顔を出すな。……どうした。わたあめが気になるのか」

(わたあめ!? うまいのか!?)

「……砂糖を原料にしているから、お前でも食べれるはずだ。一つ買うか」

(やったー! どんな味なのかな! 楽しみだ!)


 心がいるため、この班は食べ物の屋台を多く回ることになった。

 だが、合間には美海が希望する店にもきちんと行っている。

 手を繋ぎながら自分の前を歩く兄妹を、柊平は微笑ましい気持ちで見守っていた。


「ほら! しんにい! ソースが口のまわりについてるよ!」

「……ん」

「ふいてあげるからしゃがんで! ゆかたなんだから、そででふかないでよね!」

「……ありがと」

「まるで、姉と弟のようだな……」


 そのやり取りを見て浮かんだ心の声が、自然と柊平の口から漏れていた。

 慌てて口を噤んだが、当の二人は特に気にした様子はない。


「そういえば、しゅうにいってきょうだいいるの?」

「……ああ。兄が数人いる」

「みんなおにいちゃんなんだ! しゅうにいとにてる?」

「……どうだろうな。自分ではわからない」

「みんな男の子なら、なかよさそうだよね!」

「……そんなことはないな。お前たちみたいに一緒にお祭りに行ったり、ましてや手を繋いで歩いたような思い出もない」


(……だから正直、少しだけお前たちが羨ましい)


 最後の一言は、口には出さなかった。

 一色隊には、基本的に一人っ子の隊員が多い。

 透花、虹太、湊人、理玖、晴久、颯などがそうだ。

 一人っ子ではない蒼一朗と心は弟妹と仲がいいため、密かに羨ましく思っていたのだ。


「しゅうにい、ちょっとしゃがんで!」

「……こうか?」

「もうちょっと!」


 美海に言われた通りに屈むと、小さな手が頭に乗せられた。

 そして、優しく撫でる。


「これは……?」

「みうががんばると、しんにいはいっつもこうしてくれるんだよ! しゅうにいはお兄ちゃんたちとあんまりなかよくないみたいだから、やってもらったことないでしょ?」

「……そうだな」

「だから、みうがやってあげる! しゅうにい、毎日がんばってるもんね!」

「……悪いな」


 幼い少女の純粋な気遣いが嬉しかったので、柊平はそのまま撫でられていた。

 すると、いつの間にか頭の上の手が増えていることに気付く。

 それは、心のものだった。


「僕のこと、お兄ちゃんって呼んでもいいよ……」

「……いや、それは遠慮しておこう。気持ちだけで充分だ」

「そっか……」


 大の男が少年少女に撫でられている光景は、傍から見ると不思議なものだった。

 だが、二人の優しい手付きが心地よかったのでしばらくそうしていた。


(オレも! オレも撫でてくれよー!)

「ぱかお、出ちゃだめだよ……」

「服がぬげちゃう! ぱかお、あばれないでー!」

「……あまり聞き分けがないと、本当にリードをつけることになるぞ」

(ご、ごめんなさーい!)


 自分も撫でられたくなってしまったぱかおが鞄から出ようとするまで、その穏やかな時間は続いたのだった――――――――――。

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