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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十四話 月下美人みたいな君
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憧れていた夏の甘さ

②エンジョイ班1の場合


「大和、どこか行きたい店はあるか?」

「大和くんが行きたい場所は、全部行きましょうね」


 場所取り班以外は、数人のグループに分かれてお祭りを楽しむことになった。

 ここは、蒼一朗、晴久、そして大和の班である。

 無茶をする者がいないため、非常にほのぼのとした雰囲気が漂っている。

 大和は、ノートに”かきごおりとかたぬき”と書くとそれを二人に見せた。


「……大和、遠慮しなくていいんだぞ?」

「そうですよ。昨日、僕と蒼一朗さんが行きたいって言ったのを覚えてくれていたんですよね。嬉しいです。でも、せっかくだから大和くんの行きたいお店を教えてください」


 この言葉に、大和はぶんぶんと首を横に振る。

 “ほんとうにぼくがいきたいんだよ”と書いても、二人は納得していないようだ。

 “あついからかきごおりが食べたい。かたぬきもやったことないからやってみたいよ”と再び書くと、ようやく分かってくれたようだ。


「……大和がそこまで言うんなら、まずはその二つに行くか」

「そうですね。その後、他にも行きたいお店があったら行きましょう」


 大和は満面の笑みを浮かべると、蒼一朗と晴久と手を繋ぐ。

 まずは、型抜きのお店に行くことになった。

 蒼一朗はなんと、見事最高難度の型抜きに成功し配当金を入手することに成功したのだ。


「蒼一朗さん、すごいです!!」


 晴久に続き、大和も”お兄ちゃん、すごい!”と書いて見せる。

 ちなみに、晴久と大和も簡単なものに挑戦したが、残念ながら途中で割れてしまった。


「ハルも結構うまかったじゃねーか。あと少しだったのにな」

「最後に油断してしまいました。僕も初めてだったんですが、型抜きって楽しいですね」

「だろ? 大和はどうだ? 楽しかったか?」


 蒼一朗からの問い掛けに、大和は興奮気味に鉛筆を動かす。

 そして、“たのしかったよ! おにいちゃん、とってもかっこよかった!”と綴る。

 かっこよかったと言ってもらえて、蒼一朗は頬が緩むのを止められなかった。


「そっか。それならよかったぜ。じゃあ、早速この金でカキ氷食いに行くか!」


 三人は型抜きのお店を後にすると、カキ氷を食べに行くことにした。

 到着すると、そこには色とりどりのシロップが並んでいる。

 苺やブルーハワイなどの定番のものから、桃やパイナップルなどの珍しいものまである。

 それに目を輝かせているのは、大和だけではなかった。


「ハル、どれにする?」


 晴久も、まるで子どものように瞳をキラキラさせている。

 途中で頭痛がして食べ切れないとわかっているので、あまり食べたことがないのだ。


「あっ、いえ、僕は……」

「遠慮すんなよ。さっきの型抜きで金浮いたし。好きなの食えよ」

「えっと、じゃあイチゴで……」

「わかった。大和はどれだ?」


 大和は、レモンのシロップを指差した。


「レモンな。おっちゃん、イチゴとレモンとブルーハワイ一つずつ……」

「あのっ! 蒼一朗さん!」


 注文しようとした蒼一朗を、晴久が遮る。


「なんだ?」

「あっ、あの……! 練乳もかけてもいいですか……!?」

「……は?」


 真剣な表情で言い切った晴久に、蒼一朗は驚きを隠せない。

 それを晴久は、否定だと受け取ってしまったようだ。


「ご、ごめんなさい! 食べ切れないかもしれないのに、勿体ないですよね……!」

「いや、別に大丈夫だぜ。残したら心にやればいいし。あいつなら、溶けた状態でも喜んで飲むだろ。おっちゃん、レモンとブルーハワイ、イチゴは練乳トッピングで一つずつ頼むわ」

「あいよー!」


 こうして晴久は、長年憧れていた練乳がかかったカキ氷にありつけることになったのだ。

 口に含むと、幸せな甘さが口内に広がる。


「蒼一朗さん、ありがとうございます。とてもおいしいです」

「よかったな。無理して全部食おうとすんなよ。あっ、大和。レモン一口くれ。兄ちゃんのブルーハワイも少しやるから」

「大和くん、僕とも交換しませんか? 甘くてとてもおいしいですよ」

「………………………………♪」


 三人は始終まったりとした空気の中、花火が始まるまでの時間を過ごしたのだった――――――――――。

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