花火大会に行こう!
「明日、花火大会に行こう!」
「行きましょー!!」
「うん、行こう」
とある日の夕飯後、皆が寛いでいる時間に、透花、颯、湊人が笑顔で言った。
賛同し盛り上がる者、あからさまに嫌がる者、急な提案に驚く者など反応は様々だ。
「実は、もう全員分の浴衣は用意してあります!」
「俺が全員分の柄をチョイスさせてもらいました!」
「僕が情報を提供したオーダーメイドだから、大きさもピッタリだと思うよ」
この三人、とにかくノリノリである。
透花と颯はともかく、インドアな湊人がこの手のイベントに乗り気なのは珍しい。
それを口に出したのは、虹太だ。
「湊人くん、どうしたのー? いつもはこういうの嫌がるのに」
「いや、透花さんが全員分の浴衣を用意してくれるっていうからさ。タダで貰えるんだからお得でしょ。部屋着にできるように、僕は甚平にしてもらったんだ」
「なるほどね~」
タダで貰えるものは全て貰っておけ、湊人の座右の銘の一つである。
「ゆかたなんて着たことないよー! やまとくん、楽しみだね!」
「………………………………♪」
「花火大会……。いか焼き……。わたあめ……。焼きそば……。りんごあめ……」
(オレも行くぞ! おい、シン! 連れてってくれよな!)
「僕、カキ氷を食べ切れたことがないんです……。いつも頭が痛くなってしまって……」
「ハルらしいな。俺は、せっかくだから型抜きに挑戦してーかも」
「祭か……。悪事を働く者がいないように、目を光らせておかないといけないな」
盛り上がっている皆を横目に、理玖は静かにリビングを出ようとした。
彼は人の多い場所が苦手なのだ。
花火大会など、以ての外だろう。
しかし、颯と湊人に捕まってしまう。
「理玖さん、どこ行くんすか!?」
「……僕はパス。みんなで行ってきていいから」
「え!? みんなで行きましょうよ! その方が絶対に楽しいっす!」
「そうですよ。僕、全員で行くの楽しみにしてたんですから」
「……よく言うよ。普段なら、君もこっち側のくせに」
「ふふっ。僕は臨機応変な人間ですから。自分にとって旨味のある方を選ぶだけです」
理玖は、隠す様子もなくため息を吐いた。
妙にテンションの高い二人の様子から、逃げられないと判断したのだろう。
この男、最後にはなんだかんだ言って付き合ってしまう性分なのだ。
「理玖のため息は、肯定ととらせてもらうからね。じゃあ明日は、みんなで行こう!」
透花が、満面の笑みを浮かべながら言う。
こうして一色隊は、全員で翌日の花火大会に行くことが決まったのだった。