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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第二十三話 再会はカンガルーポーと一緒に
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愛が引き起こした奇跡

「大和!!」


 ……お兄ちゃんが、走ってくる。

 ぼくは、そのままお父さんとお母さんのおはかの前にいた。

 ……もちろん、二人はもういない。

 だけど、さっきまでは全然聞こえなかったほかの人たちの話し声が聞こえる。

 ぼくは、お兄ちゃんに返事をしようと思って口を開いたけど……。


(出ない、よね……)


 ……やっぱり、声は出なかった。

 でも、いいんだ。

 ぼくは、お兄ちゃんがいるところにもどってこれたんだもん。


「大和! 怪我してねーか!? 急にいなくなるから、どこに行っちまったのかと……!」


 お兄ちゃんはぼくの前まで来ると、ぎゅっと抱きしめてくれた。

 たくさん汗をかいてるし、息もはやい。

 いっぱい、心配かけちゃったんだろうな……。


(お兄ちゃん、ぼくは大丈夫だよ。話したいことがあるんだ)


 そういう思いを込めて、お兄ちゃんの背中をぽんぽんとたたく。

 それは伝わったみたいで、はなしてくれた。

 ぼくはリュックからノートとえんぴつを出して、さっきまでのことを書く。


(お兄ちゃん、ぼく、お父さんとお母さんに会ったよ)

「親父とお袋に…? どういうことだ、大和」


 ぼくは、じゅんばんにせつめいした。

 気付いたら、だれもいなくなっていたこと。

 お兄ちゃんを探してここまで来たこと。

 そうしたら、お父さんとお母さんがいたこと。

 その二人に、むりやりどこかに連れていかれそうになったこと。

 そこを、本物のお父さんとお母さんが助けてくれたこと。

 さいしょに会った二人はにせもので、神さまのつかいだったこと。

 このへんでは、さいきん神かくしがはやっていること。

 ぼくも、もう少しで神かくしされそうだったこと……。

 ぼくが少しずつ書いていくのを、お兄ちゃんは待ってくれた。

 全部せつめいすると、なんとなくなっとくしてくれたみたいだった。


「そんなことがあったのか……」

(うん)

「……実はな、出発する前にあいつから言われてたんだよ。最近、ここら辺では頻繁に人が失踪するって。まさか、神隠しだったとはな……」


 あいつっていうのは、とうかお姉ちゃんのことだ。

 お兄ちゃんは、お姉ちゃんの名前をよばないんだよ。


「……親父とお袋が、守ってくれたんだな。感謝しねーと」


 お兄ちゃんは、二人のおはかをやさしい顔で見ていた。

 ぼくも、お父さんとお母さんにお礼を言おう。


(お父さん、お母さん。助けてくれてありがとう。大好きだよ!!)


 ぼくたちは、手をつないで帰る。

 こうしてぼくの、ふしぎな一日は終わったんだ!

 おうちについたら、すぐに絵日記に書こう!

 “おはかまいりに行ったら、お父さんとお母さんに会えました”って!

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